[5合目にて。10時近くまで雨だった空模様は一気に晴れ上がる。]
YM181局
CBのオンエアデーがあるのは2カ月おきで、基本的に奇数月にあるので、9月の後は11月ということになる。したがって10月はオンエアデーがないのだが、10月の連休は気候もよくアウトドア活動にはもってこいのシーズンなのにもったいない話である。そこで一人、手軽な高所運用を考えてみる。目的地は富士山の富士スバルライン。4合目と5合目だ。4合目の大沢駐車場は秋オンでサイタマAD966局さんが運用されていたのが記憶に新しい。
今回のテーマはシズオカYM181局とQSOすることと、古(いにしえ)のリグのテストである。
YM181局は不思議な方だ。沼津や伊豆近辺で、なにげなくQRVしても、必ずどこかでワッチされており、応答をいただく。まるで忍者のような方だ。ただ最近はあまり出てこられず、つながっていない。秋オンで山梨県の鳳凰山(2,840m)からQRVしたときも期待していたのだが、残念ながらつながることはなかった。当局が最後につながったのは、なんと昨年6月の西表島運用の時ということになる。ご年配の方なので、体調でも崩されているのではないかと心配なので、富士山あたりまでくれば繋がるかもしれないという思いである。ご体調等完全であればよいのだが・・・。
古のトランシーバーの方は、ナショナルのT-1とシャープのCBT-65、それに三洋のTA-95R(S)である。T-1は昭和38年製、CBT-65は昭和48年製、 三洋は昭和47年製である。いずれも40~50年前のリグだ。このロケを選んだのは一つ目の目的のほかに、4合目、5合目のような標高2,000m以上まで上がれば、お相手してくれる潜在的な局数も増えるだろうし、飛び受けの距離の確認にも好適だがらである。テストのお相手をしてくれる、丁度良い局があればいいのだが・・・。
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6:50分、4合目大沢駐車場に到着。雨はかなりの量が降っており、ガスっていて視界は効かない。天気予報では6時ぐらいには上がるはずなのだが、やはり山の回復は遅いようだ。車の中でうとうとしながら待機する。9時を過ぎてようやく雨は小降りになり、10時前になってようやく上がる。やれやれ3時間近くの時間のロスだ。ドアを開けると、雨上がりの新鮮な空気が流れ込んでくる。リグを一揃い広げる前にさっそく、87Rでコンディションチェック&CQを飛ばしてみよう。雨粒は薄明るくなった雲間から、まだ時折ポツリと落ちてくる。
んん~、夏でもないのに妙にピュルルン系ノイズがうるさい。はっきり言って邪魔だ。4~6Chあたりは海外QRMも激しい。どこまでもグランドウェーブが伸びていきそうな、「静かな秋」は期待はずれだったようだ。とにかくCQを出してみよう・・・・・・・??!!なんと、8ChのCQ一発目で、シズオカYM181局から応答がある。まるで当局の行動を察知されていたかのようだ(笑。YM181局とは、無論、全く連絡は取っていない。ネットなどで事前告知も全くしていない。まったく不思議なお方だ。とはいえ普段通りの、いつもの元気そうなお声が久しぶりに聞こえてきて何よりである。特に体調を崩されたりと、変わったことはないようで、一安心である。リグは車のルーフ上にセットしたICB-770、山梨県北杜市の川の横からQRVされているようで、これから伊那市の方へ向かわれる途中らしい。これで、QRV開始10分であっけなく本日の移動目的の半分が達成されてしまった(爆。それにしても、あたかも当局を待ち構えていたかのQSOだが、当局自身はそれが目的で来ているので、これは非常にうれしいサプライズである。ちなみに、仮に待ち構えていたとしても、いつ飛んでくるか分からない一発目のCQに応答するのはかなり難しいものである。
バンド内は、ビュルルン、ザワザワ、と時々Sメータ5~6位振ってくる程騒々しい。しずおかDD23局からもコールを頂くが、富士宮市内と距離は近いにも関わらず、音声を切り分けるのがなかなか大変だ。もっともDD23局は窓からアンテナを突き出して固定から運用されているようでガツンとくる入感ではない。
空は西のほうから雲が切れ始め、青空が覗き始めた。DD23局曰く、「西から天気が回復しているようなので、そのうちそちらも晴れますよ」、とのことだ。今度は二つ目の目的である、リグテストのために、より多くの運用局が期待できるであろう、5合目へ向かってみることにする。
試験 |
5合目に着いてリグをセットし終わる頃には、すっかり空も晴れ上がった。10時近くまで暗い雨模様だったのがまるで嘘のようだ。テストの前に、とりあえずは、と580Dで運用してみるが、運用局は全く見つからない(笑。運用開始から30分近くたって、ようやくナガノAA601局のCQをキャッチするが、なぜかお互いコールが行ったり来たりで、交信できない。そのうち聞こえなくなってしまう。それにしても、ピュルルンと海外QRMが全チャンネルで容赦なく飛び込んでくる。信号が弱い局だとかなり聞きづらそうだ。サイタマAB847局(埼玉県久喜市)からもコールをいただくが、信号はそれほど弱くないにもかかわらず、海外QRMでコールサインが聞き取りづらい。RS42だ。
「とりあえず運用」、どころか、QSOできる局がほとんど見つからないというのは全くの予想外だ。おまけにこのノイズとQRMの状況下では、製造から40~50年経つ古のリグのテストには余りにも過酷過ぎるだろう。信号が強いと言う意味では、八溝山で運用中のイバラギAB399局が56/59で入感してくるが、いろいろと別のミッションを抱えられているようだ。受信の時間はどんどん増えていく・・・。結果的にお昼までに5合目でつながったのはわずかにこの2局だけである。5合目運用としては極めてさびしいリザルトで、リグの試験どころではない(笑。
DCRはどうか?こちらもCQを出しても返事はない。アレレ、東京近郊のDCR運用局はこんなに少ないのか?(笑。唯一春日部市のカスカベKO003局より応答を頂く。しかし、今日は固定で聞いておられる局も他にはほとんどいないようで、どなたからも応答はない。ボケーと受信に専念?していると、ポータブル7、福島県古殿町三株山からイバラギTK911局のCQが入感してくる。アンテナマーク1本だ。TK911局の説明によると、三株山の看板には富士山が見える、と書いてあるらしい。ご丁寧に距離も248Kmと書いてあるようだ。TK911局はAB399局が実施されている?ロールコール狙いのようである。結局DCRもお昼までに繋がったのはこの2局だけである(爆。
ラジオ事業部長の願いは叶ったか?
CBはお昼を過ぎてからは、みかも山(栃木県佐野市)のさいたまBB85局、そしてEsが出ていたせいか、今年の与那国島運用でお世話になったオキナワYC228局(石垣島)とつながるが、それっきりだ。なかなかテストには踏み込めないが、せっかく持参してきたので、順次CQを出して古のリグの性能の具合を試してみることにする。まずはT-1だ。
このリグは、『どうか末長くご愛用のほどを、そして毎日をよりたのしくおすごしくださいますよう・・・』と、ナショナルのラジオ事業部長の願いが詰まったリグだ。昭和38年製、すなわち1963年で、まさしく日本の高度経済成長期の人々の生活の空気感の一端を感じさせるようなリグである。今でこそ我々CBerは、いとも簡単に、お小遣い程度のお金でCBトランシーバーを扱っているが、当時のトランシーバーと言えば、普通の人は余り触れることのない貴重な電気製品であったに違いない。当局はこのT-1を2台所有しており、一台は送信OKながら受信はNGのようであるが、今日持参のリグは少なくとも至近距離では製造から49年を経て完璧に動作しているリグである。そのようなリグを今一度実際にオンエアさせてあげたいという思いが強い。仕様は3Ch(27.040MHz)で100mWである。
ボリュームを兼ねた、ロータリー式のスイッチをオン、ボリュームを上げていくと、朝からうるさいホニャラやら、ピュルルンノイズが、いにしえのステレオ装置のようなスピーカーグリルから何の問題もなく再生されてくる。全く普通に動作している。Press
to talkボタンを押して、CQを出してみる。(ボタンはリグの上にある)残念ながら応答局はないが、平行ワッチの87Rからは、Fズレもないようなきれいな変調音が聞こえてくる。果たして、電波はどこまで飛んでいるのか?相手局がないのが残念だが、これまで580Dや87RでさんざんCQを飛ばしても応答局が皆無だったので、致し方ないだろう。少なくとも50年前のリグとは思えない動作感だ。また折を見て実験することにしよう。次回は、ぜひラジオ事業部長の願いを叶えたい(笑。
行け!早川兄弟社!
「亀山モデル」もあっという間に色あせ、少なくともこの点に関しては『目のつけどころがシャープ』だったとは言い難いシャープ。シャープ・ペンシルを発明したときの創造性に立ち返って欲しいが、次はCBT-65である。
このリグはフルメタルボディでずしりと重い。厚手のアルミの前面・後面パネルに中心部の鉄製の本体層をサンドイッチするような構造で、しかもアルミパネルはヘアーライン仕上げとなっている。贅沢な造りだ。メタルボディという点では同じく昭和40年代の100mW機、三菱のTX-830を連想させるが、バッテリーチェックメーターの付いた筐体上部などは、昔のアマハンディ機を髣髴とさせるようなデザインだ。T-1同様、昔のリグにありがちな、パネルをはずして電池を交換するタイプで、後面パネルをはずすと、回路の電子部品の一部が垣間見える。CBT-65は4台所有しているが、すべて送受信動作しているものの、Fずれなどがありそうだ。特に部屋の中などでの至近距離のチェックでは、変調の乗り方が良く分からない。ある程度距離のある局と交信してみないと良し悪しは何ともいえない。今日は4台の中で一番調子が良さそうな個体を持ってきた。仕様は.968、.976の2チャンネル仕様で出力は500mWである。さっそくスイッチをオン、ボリュームを上げていく。これもスイッチ兼用のロータリー式のボリュームだ。
比較用の87Rでは、海外もピュルルン系ノイズも結構にぎやかなのだが、受信がへたっているのか、ノイズがなかなか上がってこない。送信はどうか?CQをしばらく飛ばしてみる・・・・応答はない。至近距離の87Rはメーターは振り切れているし、変調音も若干上ずっているもののちゃんと聞こえているので、一応は信号は飛んでいることは間違いないだろう(笑。しかし今日のコンディションでは運用局がほとんどいないので、やはりテストにはなりそうにない。しかも、1、2Ch仕様なのでなお更である。やはり今日は試験日和ではなさそうである。
ブリジストンではありませんが・・・
最後に、三洋のTA-95R(S)を試してみる。こちらは、ブリジストンのブランドでOEM生産され、販売されていたことで有名なリグである。ブリジストンが何を思ってトランシーバーを販売していたのかは不明だが、チャリンコが遊びや移動のメインツールであった中高生向けに自転車のアクセサリーとして販売していたのか?。アクセサリーには相応しく、AMラジオ付きのトランシーバーとなっている。えひめCA34局さんによると、モデル名に(S)が付いているのが三洋がオリジナルモデルとして製造販売していたもので、ブリジストン向けと区別するためではないか?という。ちなみに、「ブリジストン」ブランドのものは今となってはかなりレアらしい(笑。(このリグの詳細は、えひめCA34局さんのブログ、「50みりわったーず」に詳しい。)
これもロータリー式のスイッチをオン、すでに確認済みだが、まずはラジオをチェックしてみる。周波数と放送局の関係は良く分からないが、さだまさしだろうか、ギターか何かに関するトークが聞こえてくる。個体の実力のせいか、1000KHzまでの局は良く聞こえるが、1,100を越えると若干AF出力(感度)が落ちるようだ。今度は筐体上部のスライドスイッチをトランシーバー側にスライド、CQを出してみる。このリグは筐体側面にスピーカーが取り付けられており、送信時は側面を顔に向けて話しかけることになる。3Ch(27.040)の100mW仕様だが、やはりこちらも応答局は全くない(笑。スピーカーから漏れ出てくる受信音も、ラジオに比べればかなり控えめで、受信感度も少し弱っているのかもしれない。
いずれにしても相手局がいないのでは話にならない。試験はまた折をみて実施することにするが、580Dに戻っても、相変わらずQRV局はなかった(笑。
再び4合目へ戻る
13:30からは再び4合目の大沢駐車場に戻ってQRVしてみる。DCRではハママツAF59局と繋がる。木曽御嶽からはDCRによるUHF-CBロールコールが行われているようで、RC狙いで移動されてきたもののなかなか電波が受からないようだ。CBでは、ピュルルン系ノイズと海外QRMが午前中にもまして強力にかぶってきており、シズオカGX707局(島田市)、しずおかDL8局よりコールを頂くが、特にGX707局にはコールサイン等でお手数をおかけしてしまった。
夜、東京多摩地区にある実家に帰ると、「雨の中、無線をやっていたのか?」という。どうも14時過ぎまで、ずっと雨だったらしい(笑。どうりで移動局がほとんどいなかった訳である。
果たして次回?の試験はいつになるのか。気が向いたら・・・ということになるが、T-1については、なかなか期待は持てそうだし、ラジオ事業部長の思いはぜひいつか叶えたい(笑。 ('12/10)
大沢駐車場(午後)
運用データ |
シズオカYM181/山梨県北杜市 | 53/54 | しずおかDD23/静岡県富士宮市 | 52/52 |
ナガノAA601/ | CBL | カスカベKO003/埼玉県春日部市(DCR) | M5/M5 |
サイタマAB847/埼玉県久喜市 | 42/52 | イバラギAB399/茨城県八溝山 | 56/59 |
イバラギTK911/福島県東白河郡古殿町三株山(DCR) | M5/M5 | さいたまBB85/栃木県佐野市みかも山 | 52/55 |
オキナワYC228/沖縄県石垣市石垣島 | 52/52 | ハママツAF59/静岡県浜松市南区(DCR) | M5/M5 |
シズオカGX707/静岡県島田市 | 41/55 | しずおかDL8/静岡県浜松市天竜区龍頭山 | 52/52 |
2012運用記 | |||
山梨県鳴沢村 |