峠の茶屋
峠の茶屋は家族のおばあちゃんと娘たち?で運営されているようだった。
みそおでんでビールを飲んでいると、おばあちゃんは、
「食べられるかいね?」と、別のメニューの料理のために用意してあると思しききんぴらゴボウをわざわざサービスで、あてに出してくれる。その心遣いが、ありがたい。
「どこまで行かれるのかね?」と言う。当局は無線機を入れるため、ハイキングコースには似合わないリュックを担いできていた。
「ちょっとそこの展望台まで無線しに来ました。」
「展望台も最近は木が育って高くなってるから、無線はどうかね~」と、女主人の一人である、おばあちゃんが心配そうに言う。外を見ると、今日はマラソン大会が行われているらしく、茶屋の前に設置された給水所には、絶え間なく後から後から、次々とたくさんのランナーがやってくる。人数からするとかなり大きな大会のようだ……。



顔振峠

顔振峠(こうぶりとうげ、かあぶりとうげ)。昔は、皆「こうぶりとうげ」と呼んでいた気がするが、最近は「かあぶりとうげ」の送り仮名表記が多いようだ。
顔振峠は、秩父の山域の中でも、飯能市側の、東の端のほうに位置する。よく、サイタマAB960局さんが運用されている物見山とも直線5キロ程度しか離れていない。奥武蔵グリーンロードという1車線程度の山間道路が、500mくらいの標高から西に向けて1,000m近くの標高まで、関八州見晴台や飯盛峠、狩場坂峠を通り丸山方向まで続いている。いずれも無線では有名な地域で、CBの移動運用でもよく使われる。CBのメッカ、堂平山はこの筋の北側に位置する。


16日の土曜日、秩父地域の地図を何気に見ていた当局は、昔、散歩代わりのドライブでこのあたりによく行っていたころ、よく食べた「みそおでん」を思い出し、急に食べたくなって、翌日曜日、ぶらりとでかけてみることにする。しかし、東京に逆単身赴任中の当局は車の足がない。今日も電車移動(笑。西武秩父線吾野(あがの)駅から、標高差400mにも満たないハイキングコースを、みそおでん目当てに、峠まで1時間程度登っていく。朝早すぎると茶店が開いてないだろうなと思い、わざと遅めに出てきたのだが、当局が着いたときには、もうとっくに店は開いていたようだ。


みそおでん第1部
朝から缶ビールで・・・
平九郎茶屋
峠には3軒ほど茶屋がある。
マラソン大会
仮装ランナーもいたり、いったいどういう
大会?



みそおでん 第1部
……峠の茶屋に着いたとき、おでんより先に誘惑したのはビールの3文字だった。当然、たのまないわけがない。しかし朝の9:30過ぎからビール飲んで酔っ払っていてよいのだろうか?と、最初はさすがに背徳感のかけらのようなものがあったが、そんなものはビールの二口目ですぐに跡形もなくアワとともに吹き飛んでしまう。ひと汗かいて下から上がってきたところなので、味が格別なだけになお更だ(笑。すぐに2缶目に入る。

みそおでんは昔と違わぬ、記憶どおりの味だ。もちろん単なるみそおでんなので、目が飛び出るような旨さがあるわけではないが、柚子の利いたミソだれの味加減がなんともいえない。こんにゃくとのバランスも絶妙だ。おでんを食べながら思う。やはり今日はやって来てよかった(笑。これで本日の目的のほとんどは完遂した(爆。

このまま、みそおでんとビールの連続で腰を落ち着けてもよいのだが、そうも言ってはいられない。QRVもしなくてはならない。リアル板にもQRV情報を書き込んでしまった(笑。一応2缶だけで第1部は切りあげて、つづきは、帰りの楽しみ(第2部)にとっておくことにする。

QRV開始

峠の茶屋を出て、更に5分ほど小山を登っていくと展望台へと出る。ぐっと視界が開ける。展望台といっても、木やコンクリートの人口のやぐらなどがあるわけではなく、単に木々がなく開けた小高い山の頂があるだけである。しかし、南側は茶店のおばあちゃんが言っていた通り、木々の背が高く、かなり塞がれた感じだ。それでも、木が頂上まで迫っていないのが救いで、その分だけ開放感をもたらしている。北東方向から北側は木々もなく視界が開けている。開放的な景色をバックに若いススキの穂が垂れていた。

山頂は当局一人だけで、雰囲気的にハイカーはほとんどやって来そうにないので(これは後に誤りであることが分かるが)、広場の中心に三脚をセットし、ワッチに入ってみる。今日持参したのは580Dと87Rだが、580Dをメインで使うつもりで持って来た。580Dはかなり感度が高く、蛍光灯の室内などでは、さまざまな雑音を拾って華々しくSメータを振らせるが、山頂はノイズレベルが低いせいか、サーという音の割には、意外にもSメータがほとんど振れていない。室内とは違って、なかなかいい感じで無線機らしく鳴っている…。

しばらくバンド内をワッチし、ぐんまRB32局のCQをキャッチする。皆野町移動ということで、距離も近くS8と強力だ。所沢のぶどう峠にはサイタマAS326局が移動されており、こちらも輪郭のはっきりしたAM変調で信号が聞こえてくる。
ほかのチャンネルもバンド内は静かで、やはりノイズレベルが低い。秋のGW(グランドウェーブ)シーズン真っ盛りといった感じで、気分的には(気分だけだが)、電波がどこまでも伸びていくような感覚だ。

顔振峠のあたりはまだ木々の色づきは始まっていないが、うす~く雲のかかった明るい空、汗ばむくらいの気温と、ときどき、さらりと流れていく風に、心地よい無線運用が続く。





千葉県流山市の江戸川河川敷からは、チバ13811局の信号が飛んでくる。当局側標高も500mほどで、流山くらいになると角度も浅くなる分、変調強度は弱めの入感となるが、それでも52で聞こえてくる。

6ChでCQを出していると、聞きなれた「シズオカ」ステーションからコールがかかる。シズオカAD301局だ。JR八高線の明覚駅からとのことで、もちろんシグナルは59。昨日から堂平山で開催されていた、「アウトドアハムフェスティバル」に参加されての帰りらしいが、こんなところでAD301局とつながるのも妙な感じがする。おそらく列車の待ち時間か何かと思われるが、駅からCB機で出てこられるところなどはさすがである。
吉見町からは、いつもお相手いただいているサイタマAB960局の信号が入感してくる。今日も物見山あたりからひょっとして出てこられるかもと思ったが、今日は吉見町から迎撃して下さった。

顔振峠は、場所がポピュラーなだけに、交信した埼玉局の中には昔高校生くらいのころには自転車でよくやってきて無線運用したという方もおられる。今となっては自転車で行っていたことなど信じられないと言う。確かにここまでヒーフー登ってきたとしても、ここから先自転車で丸山方面に向かうには、かなりのアップダウンがあり、この歳になると趣味で自転車でもやっていない限り、不可能だろうなぁーという思いは同感である。

富士山の5合目には、ヨコハマAC306局がでておられる。その方向には木が生い茂っているのだが、木が遮蔽する割には、相手の標高に助けられて信号はS5を振ってくる。1Chでは、越谷移動のチバAE366局からコールを頂く。AE366局とは沖縄運用のEsなどで印象深いQSOをさせていただいており、コールは一方的に妙に親近感があるのだが、グランドウェーブでの交信は意外にも初めてだった。東芝の500mW/2Ch機から出られているとのことだが、信号は55で申し分なく伝わってくる。

山頂は、「人は来ないだろう」という当局の予想に反し、5~15名くらいの団体さんが、次から次へとやってくる。おかげで当局も山頂の隅っこの方を転々として運用していた。昼時なので、ハイカーにとっては広場状になった山頂は、お弁当を食べるのに絶好の場所なのである。

12時少し前からは、運用開始時とは打って変わって、海外局が全チャンネルにわたって、騒がしく入感し始めていた。QRMは Sも強く、特に低チャンネルはほとんど使えないほどのコンディションになってきた。AE366局との交信終了後は、1Chでは南の国からと思われる音楽まで流れてきていた。QSO中に海外信号が唐突に入ってきてマスクしたりするので、QSOしていてもあまり気持ちがよくない。自ずと、様子見でワッチ時間がかなり長くなり始めていた。


幻のトランシーバー クボタ KA5000
13:30も回った頃、ワッチをしていると鎌倉移動のヨコハマBF35局と、1時間ほど前にQSOを完了していたサイタマOD49局/富津岬移動の交信が聞こえてくる。聞いているとなにやら、BF35局は幻のトランシーバー、クボタのトランシーバーを試されるようだ。そう、あのトラクターのクボタのトランシーバーである。OD49局との交信終了後にお声掛けし、770との比較などをレポートする。使われているのは、クボタのKA5000だ。変調はきわめてクリア、低域はカツっとした芯があり、中高域が明るく明瞭なのはコンデンサーマイクらしい音だ。Sも770より二つほどUPして入感してくる。これが「クボタの」音か。大変聞きやすい。何か幻の魚に出会ったようようで、交信できただけでもなんとなくうれしい。
CB機の歴史を紐解けば、昭和30年代から数え切れないほどの機種がリリースされているが、当局の中では、使ってみたいトランシーバーとして、「幻」の筆頭は断然ソニーのICB-R6(ICB-M800)、次にNECのNTR-808とこのクボタのトランシーバーである。NTR-808などは、まだ稀にオークションなどでも見受けられるが、クボタだけはオクでも見たことがない(探し方が悪いだけか?) R6に至っては、市場に出なかったとの話だが、総務省公開の検定機リストにも載っており型式検定はとっている。R6とされる写真(以前、ある局長さんが掲示されていたもの)を見る限り、それが本当であれば、当時のSWLラジオを髣髴とさせる、いかにもソニーらしい斬新なデザインで、従来のCBトランシーバーの域を抜け出て、そのカッコよさは群を抜いている。

みそおでん第2部のためには、14時すぎには撤収しなければならない。「しなければならない」ということもないのだが、1時間に2本しかない電車、特に池袋まで直通で行く快速急行(1時間に1本)が気になるのである。いつもお世話になっている、さいたまBB85局、ぐんまAD17局、サイタマAD966局や、とうきょうCT73局にお相手いただき撤収する。
QRV後のみそおでんとビールは、更に格別だったのは言うまでもない(笑。
                                                   (’10/10)



[みそおでん第2部: 第2部はいきなり二人前を発注。ビンビールで。]


運用データ
運用日:
  2010年10月17日(日) 10:20~14:10
      
運用場所:
  埼玉県飯能市
  顔振峠展望台 (標高約568m)
       
使用リグ:
  RJ-580D、ICB-87R 
  (QSOはすべて580Dで実施)
    



おまけ編
そろそろ峠の頂上に近づこうかというところまで登って来ると、登山道脇に小屋を改造したようなコーヒー店?がでてくる。ここらへんはもう山上集落の一角で、以前は納屋か何かに使っていたのだろう。「おいしいコーヒー」と看板に書いてあるが、道を急いでいるので、いったん通り過ぎる。しかし通り過ぎた後で、50mほどバック(笑。「おいしいコーヒー」と言われて捨て置くわけにはいかない。すぐ上の峠の頂上には味噌おでんが待っているが、その前にここのコーヒーを飲んでみることにする。それにしても、なぜこんなところでコーヒーを出しているのだろう?サイフォンで一杯一杯淹れてくれるコーヒーは、やや薄めだがハイキングコースの途中で味わうには上等だ。カップとソーサーが凝っており、店の中を見ると、さまざまな種類のカップが並んでいた。

峠の直下には、魔利支天を祀る立派なお堂があり、秋の奉納?が行われていた。今日はマラソン大会といい、さまざまなイベントがあるようだ。





QSO局
(敬称略)

CB
さいたまRB32/埼玉県皆野町登谷山 58/55 サイタマAS326/埼玉県所沢市ぶどう峠 58/57
ちば13811/千葉県流山市江戸川河川敷 52/52 サイタマK351/埼玉県和光市荒川河川敷 55/55
シズオカAD301/埼玉県ときがわ町明覚駅 59/59 とうきょうMS25/東京都日野市平山城址公園 59/58
サイタマAB960/埼玉県比企郡吉見町 58/55 ヨコハマAC306/富士山5合目(1,980mH) 55/55
おおさと59/埼玉県比企郡吉見町荒川河川敷 58/59 さいたまKE63/東京都青梅市赤ぼっこ 57/M5
チバAE366/埼玉県越谷市 55/53 カナガワOT207/神奈川県鎌倉市太平山 57/58
イルマ151A/東京都青梅市七国峠 56/59 さいたまOD49/千葉県富津市富津岬 41/41
よこはまBF35/神奈川県鎌倉市太平山 57/57 さいたまBB85/埼玉県羽生市 56/55
ぐんまAD17/埼玉県羽生市 54/55 サイタマAD966/東京都清瀬市 55/M5
とうきょうCT73/神奈川県相模原市城山湖 55/52



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 '10/10/17: 埼玉県飯能市