[五能線: 岩館駅に1時間に1本の普通列車が入る。岩館駅は秋田県側最後(最初)の駅。]



秋オンはどこから出るか?
実はSVが終わったときには既に東北方面から出ようと決めていた。7エリアでは余りQRV実績がない(といってもほとんどの地域がそうだが)ので、東北で一度移動してみたかったのである。8月には、世界遺産である白神山地あたりの地図を購入して、運用場所を決めつつあった。

しかし、お盆が過ぎ、そうこうしているうちに、9月に米国出張の予定が入ってしまった。どうもオンエアデーである20日の敬老の日にかかりそうな感じだが、終わり(帰国日)の予定がなんとも最後まではっきりしない。ネットなどをみていると、いたばしAB303局さんが、日本海でのダクト実験をやられることを知り、場所的に都合が良いので参加してみたい気もするが、OADに間に合うかどうか微妙のまま出張に突入する。結局、18日(土)に帰れることが分かり、16日にアメリカからネットで秋田往きのチケットを購入、土曜の夕方に成田に戻って、日曜の昼の便で秋田に飛ぶことにする。移動を決断したもののハードスケジュールだ。





9月19日(OAD 1日目)

秋田空港からは、レンタカーで白神に向かう。どんよりと灰色の雨雲が覆いかぶさり、時折雨が激しく降ったかと思うとやんだりの繰り返しだ。目的地である白神岳は青森県の南西端にあり、秋田との県境である西津軽郡深浦町に位置する。
能代から先はJR五能線に沿って北上する。海岸沿いを走る車窓からは、五能線の線路越しに時折、灰色の海を移しこんだ、重々しく荒々しい日本海が横たわっているのがみえる。しかし、観光客の第三者である当局にとっては、天気は悪くても、それはそれで絵になって興味深く映る。

16時半頃、登山口の駐車場に到着する。天気は相変わらず雨で、予報であらかじめ分かっていたとはいえ、明日の登山を考えると、やはり黒灰色の空は気分を重くさせるだけだ。いや、予報では15時には雨が上がり、敬老の日は一応曇りのはずではなかったのか。しかし、17時…18時…19時…になっても時折雨は激しくなるだけで、一向に上がる気配がない。


秋田へ飛ぶ
上空は無論快晴だが、737-800が
高度を下げると厚い雲に覆われていく。
五能線
海が見える踏切を、「リゾートしらかみ」
が通過していく。
日本海
青森県側に入ったところ。相変わらず雲
が厚い。




天候は絶望的・・・?

今の時間でこの様子だと、明日の天気はもはや絶望的だ。早朝出発せねばならないし、強雨の中、山に登っても面白くはない。地図を見ながら代替運用地を検討してみようかと思うが、窓外の雨を見ていると、そんなことを考えることすら少し面倒になってきていた。登山口駐車場には、立派な休息所が開放されており、シュラフや炊事道具を持ち込めば泊まることも可能にはなっている。しかし未舗装の駐車場は、雨水で小川ができつつあり、ぐじょぐじょになりかけていた。

じたばたしても仕方ないな~と思いつつ、車の中で横になってラジオを聴いていると、うとうととしてくる。
ふと気づくと、時計は23時になろうとしていた。しかし妙だ。外がなんとなく明るいし、静か過ぎる。水滴のついた窓ガラス越しに空をよく見てみると、なんと一面星が輝いているではないか。月も出ている。外に出てみると、完全に晴れ上がっている。どういうことか!?(笑)




普段の当局の行いが良いから、などとはつゆにも思わなかったのは当然だが、今度は気合を入れて寝ようとしても寝られない。結局2時過ぎに眠りに入ったものの、目が覚めたのは4時15分。3時半には「出発」しようと思っていたので、1時間以上の寝坊だ! 



9月20日(OAD 本番)



[山頂展望所より北方向。中央は山頂避難小屋。山頂三角点は、画面PR-6のちょうど左の部分。]


出発したものの・・・

あわてて4時半に出発したものの、歩いているとそのうち体の不調に気づき始めた。体が異様に重く、思うように動かない。軽い二日酔いの時のように気分も悪い。(無論、前日からアルコールは一滴も飲んでいない。)鏡があったらさぞ顔色も悪かったかもしれない。「こりゃ、今日はまずいぞ~」、と既に引き返すことを考え始めていた。普段は登りでは水はほとんど飲まないのだが、今日は1時間半もたたないうちにほぼ500mlを飲んでいた。出てくる汗も、運動の汗というよりほとんど冷や汗だ。ボーッとしていたせいか、最後の水場も気づかずに通り過ぎていた。登るべき標高差は1,000mちょっとだが、頂上までの一般的なコースタイムは4時間15分(休息なしのネット)。引き返すときの体力も考えながら、一応いけるところまで行ってみることにする。この分だと着いたとしても9時過ぎか?ピッチは当然、全く上がらない。

それでも、なんとかだましだまし、8時15分に山頂に到着する。着いたときは、マジに、そのまますぐ引き返そうかと思ったが、快晴の山頂に立って明るい日差しを浴びながら美しい景色を眺めていると、ようやく気分も復調し始める。山頂(展望所)は、北側に山頂三角点の峰が馬の背のように同標高で繋がるが、基本的には360度の視界が開ける。北には、山深い白神の山域の向こうに岩木山のとがった姿がくっきりと浮かび上がっている。西側には、今日はおだやかな日本海がやさしい青色で左右に広がっている。南に目を転ずると、男鹿半島の海岸線が、途中から遠く、かすむように海に向かって伸びていた。昨日の雨がまったく嘘のように、空はすがすがしく晴れ渡っている。今日も天気予報は見事に外れてくれた(爆)。


岩木山(山頂手前より)
あおもりAA113局が運用中!
日本海(9合目付近より)
海の青さが今日はいかにもおだやかだ。
登山口となる黒崎漁港の防波堤も見え
る。
男鹿半島(9合目付近より)
日本海にまっすぐ伸びていく。
先端付近の本山(715m)も見えていた。



山頂QRV
とりあえず体調もいけそうなので、87Rでワッチを開始してみる。聞いていると、八幡平移動のイワテB73局が、いたばしAB303局に代わってロールコールをやられているようだ。信号はさすがに57で強力。いつもの2エリアでの伊勢湾ロールコールのようなのりでチェックインする。場所は全然違うが、全く違和感がないのが不思議だ(笑)。

チャンネル内はOADとは思えないほど、静かだ。CQを出しても良いのかと迷ってしまうほどだ。北海道側七飯町の横津岳には、イブリB808局とオシマTK112局が合同運用されている。青森県内と津軽海峡越えのQSOとなるが52~53でクリアに入感してくる。B808局によると、当局の7月の南大東島(沖縄県)運用時に、北海道まで当局の信号が入感していたとのことだ。コールも頂いたと思うのだが当局側では残念ながらピックアップすることができなかった。そんな話をグランドウェーブでQSOできるのも、青森まで移動してきたからこそである。海峡越しに8エリアと交信するのも当局にとっては新鮮な経験だ。

折爪岳(岩手県二戸市)からは、イワテAN26局、一戸の西岳からはイワテKA215局にコールを頂く。さすがにOADだけあって、岩手県内でも各所に移動されているようである。いずれもファーストQSOであり、7エリアまで移動してきた甲斐があった。


ダクト伝播実験: しらかみDA910

特小の伝播実験もあり、関東各局も東北地区に移動されている。山形県蔵王の熊野岳にはチバHI429/7局が運用されており、久々のQSOとなる。昨年のSV以来だろうか?男鹿半島の寒風山のサイタマMS118/7局は、距離も70キロもなく、さすがに59+と強力に入感してくる。

9時からは、伝播実験の「9時の部」の始まりだ。0分台から10分ごとに、8→7→0→…とエリア毎に集中呼び出しタイムが設定されている。9時丁度からまず8エリアをワッチするが、オンエア局がないのか、ノーメリットだ。10分からはいよいよ7エリアからの呼び出しタイムとなるが、???。皆さんワッチに専念か?誰も声をだされていないので、恐る恐る実験専用コール「しらかみDA910」でCQを掛けてみる。すかさず、オガハントウDA910(サイタマMS118局/寒風山)、フタツモリDA910(いたばしAB303局/二つ森山)、ツガルDA910(アオモリAA113局/岩木山)より、いずれもM5でコールバックがある。しかし、残念ながら0エリアや9エリアからは音沙汰はない。

実験が始まる前からL05はワッチしていたが、ザーというノイズの中にも何か信号らしきものを感じていたので、残念だ。そういえばCBでも見通し外の新潟や佐渡島くらいは聞こえてきてもよさそうなものだが、何も聞こえてきていなかった。陽が昇って海水面や地面が温められ、屈折は上向きか?当局は間に合わなかったが、まだ日の出から間もない特小実験「6時の部」の結果が気にかかる。

9時20分からは0エリアのワッチにはいる。なにか確かに交信の信号が聞こえているのだが、復調ができない。業務などでない、無線交信であることはわかるのだが、モゴモゴとしていて内容が皆目分からない。フタツモリDA910局が0エリアをコールされていたので、コール後にこちらの受信状況を伝えると、フタツモリ側でも、「何か聞こえる」とのことで当局と同様の受信状況のようだった。


特小トライ
実験全体が把握できたわけではないが、屈折の状況は今ひとつのようで、「9時の部」の実験は残念ながら不発に終わったようである。特小はワッチ状態を継続し、再びCBに戻る。

山頂は時折ガスが下から吹き上げてくるが、日差しは強いながら気温は快適、すがすがしい時間が経過していた。CBでは先ほど特小で交信いただいた、アオモリAA113局よりコールを頂く。AA113局とはEsで時々QSO頂いているだけに、こうしてグランドウェーブで話ができるのは感無量だ。10月には青森まで新幹線も開通するといわれている。またこちらにお邪魔するチャンスも増えるかもしれない。その時に、またお相手いただくことをQSOでお願いする。

特小では、北海道側のオシマTK112局、イブリB808局からCBでコールをもらい、交信のトライに入る。白神岳山頂からは北方向に三角点山頂などが連なり、特小にとってはベストコンディションではないのだが、なんなくM5で繋がる。一方、折爪岳のイワテAN26局と西岳のイワテKA215局とも特小での交信をトライしてみるが、ところどころで信号の入感があるものの、継続的な受信ができず、残念ながら交信が成立しない。白神岳は1,232mほどの標高なので、間に入る山々が邪魔になるようだ。

特小実験は「12時の部」もあり、まだまだ、CB、特小とも運用したいところだが、12時前には下山にかからねばならない。帰りの飛行機は19:45分だが、下山に3時間、空港まで更に3時間見なければならない。途中でみやげも見たい(笑)。下山支度を終え、最後に特小を片付けようとすると、フタツモリDA910局のCQが入ってくる。特小「6時の部」の結果をお聞きすると、今ひとつながら、やはり早朝はCBではグランドウェーブが延びたようである。それはそれで、おもしろい結果ではないだろうか。



すべてに感謝!

山頂ではずっと気持ちよい好天だったが、登山口近くまで降りてくると天気は一転、ポツポツと雨が降り始めてくる。駐車場から車で帰路に着くと、雨も時折激しく降りかかる。まるで昨日の再現だ。ちょうど当局が山に居たときだけ、気持ちよく晴れていたことになる。山頂で、CBで最後につながった鳥海山移動のナガノNA374/7局も、雨風のかなりの荒天で、ようやく少しだけ運用できる状態になったとのことだったので、当局はかなりラッキーだったということになる。誰に感謝したらよいのかわからないが、とにかく感謝!(笑)
                                             (’10/9)




[87Rのアンテナの背後は岩木山。]
                               

運用データ
運用日:
  2010年9月19日(日)
       9月20日(月)8:15~11:40

運用場所:
  青森県西津軽郡深浦町 
  白神岳山頂 (標高1,232m)
       
使用リグ:
  ICB-87R、DJ-R20D、PR-6

  


QSO局
(敬称略)

19日
:ノーメリット


20日

CB
イワテB73/岩手県八幡平 57/57 イブリB808/北海道七飯町横津岳 51/52
イワテAN26/岩手県二戸市折爪岳 51/51 オシマTK112/北海道七飯町横津岳 52/53
チバHI429/山形県蔵王熊野岳 51/53 イワテKA215/岩手県一戸町西岳 52/51
サイタマMS118/7/秋田県男鹿市寒風山 59/58 アオモリAA113/青森県西津軽郡鯵ヶ沢町岩木山 53/54
ミヤギBA102/岩手県一関市室根山 41/41 ナガノNA374/7/山形県遊佐町鳥海山(7合目) 54/54

特小
オガハントウDA910/寒風山 M5/M5 フタツモリDA910/秋田県藤里町二ツ森 M5/M5
ツガルDA910/岩木山 M5/M5 オシマTK112/北海道七飯町横津岳 M5/M5
イブリB808/北海道七飯町横津岳 M5/M5 いたばしAB303/二ツ森(2回目) M5/


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 '10/09/19~20: 青森県西津軽郡深浦町