2014運用記
黒山
東京都青梅市



[青い空に白い樹が映える]



黒川の次は黒山か?

前回の運用は長野県大鹿村にある、知る人ぞ知る「黒川牧場」だった。今回も非常にマイナーな場所、「黒山」からの運用だ。黒山?なんて名前の山など聞いたことがないという人がほとんどだろう。場所的には、東京都青梅市(埼玉県飯能市との境)にあり、れっきとした都内である。眺望の良さで有名な棒ノ折山(棒ノ峰)のすぐ近くと言えば、すぐわかる人も多いだろう。標高は842m程である。

実はここには、5~6年前に下見に来ていたのだが、なかなか運用するチャンスがなかった。もっとも下見は山頂直下の駐車スペースまでで、山頂まで上がってきたわけではない。ただ、どうみても山頂を目指してくるような場所ではないし、山の名前が一応あるものの、ハイキングコースの通過点という位置づけなので、駐車スペースから想像しただけで、だいたい山頂の様子は想像できるというものである。それに、眺望のよい場所ならとっくに有名になっているはずである。

それでも下見以来、当局的にはいつか来ようと思っていたのだが、まさかこんなマイナーな場所&展望のない場所に運用しに来る人は絶対にいないだろうと思っていたら、その後「山岳移動の香り」で有名なかの御仁(=サイタマKM117局さん)が、2010年にここで運用されている(笑。もっとも、KM117局さんは高水三山(高水山、岩茸石山、惣岳山)の方からきっちり歩かれてきており、林道終点からひょいと上がる手抜きの当局とは大違いである。前述のとおり、このポイントは高水三山と棒ノ峰を結ぶ、コースの通過場所として使われるのが基本である。

「山頂」へは、林道終点の駐車スペース(標高約715m)から、「直登」ルートで15分強、馬乗馬場(まのりばんば)と呼ばれる尾根を通過する巻き道的コースでも20分強と、超お手軽な運用場所だ。ちなみに、馬乗馬場とは、コース上にあった看板の説明書きによると、鎌倉幕府草創期の武者、畠山重忠が行軍の途中、ここで軍馬を休ませたことにちなむらしい。関東一円、そこかしこに、鎌倉~室町時代の武士の行動に由来する地名や別称が残っているが、ここもその一つということかもしれない。

朝の山道は、シンと静寂そのものだ。幾重にも枯葉に覆われた山路を踏みしみて進んでいくと、「カサっ、カサっ」と乾いた音だけが、あたりにまるで轟くように響き渡る。足下からこんな大きな音がしようとは・・・。そして歩いているのは自分一人だけであることを嫌が応にも思い知らせてくれる。

もう初冬で木々の葉がだいぶ落ちているせいか、樹間からみえる山頂からの景色は意外と悪くはない。東南東方向には新宿の高層ビル群、そしてその向こうには東京湾がきらきらと輝いている。南側には、黄葉をたくさんつけた大木が、まだ朝の横からの日差し受け、透き通るようにすべての葉を輝かせている。その輝いた葉の向こうには、大岳山や御嶽山(みたけさん)の奥宮がよく見える。

真上を見上げると、空は深く青い。そこに紅葉や黄葉、白い枝々が見事なコントラストとなって映し出されていた。

都心方面
東京湾が輝く。手前は新宿高層ビル
群。
南方向
大岳山&御岳山奥宮
山頂
ベンチは写真手前にも二つあり、合計
4つのベンチがある。



すべてがFになった?(笑


Esで活況を呈した夏のシーズンが終わり、この時期になってくると、どういうわけか、いろいろと普段使っていないリグを引っ張り出してきて使いたくなってくるものである。今日は土曜日、どうせ運用局は少ないだろうということで、持参リグは超久々運用のR5一台だけにして、CBはそれに集中しようという寸法だ。一台で、できるだけ長い時間稼働させてやりたい・・・。ベンチに陣取って、スイッチオン、今日も予想通り海外が騒がしい。8Chではデータ送信系?か何かの無変調ノイズがS3くらい振っている。それが途切れたかと思うと、いつもは5Ch を賑わしている英語局が今日はなぜか8Chでお目見えだ。もっとも向こうはFCCなので、おそらく1KHzほどずれているのだろうが・・・。

[超久々稼働のR5。朝の光が射し込む。]


全般に、ビュルビュル系の基本ノイズが上がっており、コンディション的には悪くはない聞こえた方だ。Fの調子が上がっているのだろう。この時期になると、飛んでくるDX波のほとんどはFによるものだ。6Chあたりではいつものようにホニャラが明瞭に聞こえてくる。

しかし、やはり予想した通りで、初冬の土曜日の朝、運用局は少ない。適当にCQを出しながらしばらく待機してみるものの、応答局はない。やはり長期戦になりそうな気配だ。ところが、20分(笑)もしない内に、幸運にも最初のコールバックがかかる。さいたまUR2局で、所沢からのようだ。まだ、朝9時前だがこんな時間から応答いただけるのはありがたい。こちらにもガツンと入ってくるが、向こうにも比較的強く飛んでいるようで57のレポートだ。R5もなかなか本来の性能を発揮しているようだ。しかし、その後は案の定パッタリだ。それに比べて相変わらず海外ノイズはにぎやかで、治まることを知らない。それだけに時々繰り出すCQが余計に虚ろに響く。

 

オンエア開始から1時間が過ぎる。今日はDCRでは、飛んでくるCQのみに応えるつもりでいたが、「ええい仕方ない」と、禁を破ってこちらからCQを出してみる(笑。ねりまTN39局からのコールバックがぶつぶつと途切れながら入感してくる。ちょうど東大和市近郊をモービル移動中のようで、どうやらぶどう峠へ向かわれているようだ。『30分もすれば到着!、あとから11mでも出るので、よろしく!』と、QSOをいったん終える。何とか11mでも2局はいけそうだ(笑。栃木県高根沢町にはミヤギKI529局が移動されている。ロケの位置関係や標高はよくわからないが、強力入感だ。DCRでつながるということは、見通しの可能性が強い。「あとから11mでもつながるかもしれませんねぇ~」と、こちらも11mに期待する。


冬の香り

DCRのおかげで、なんとか全く暇になることはないものの、しかし今日はデジ簡の入感も意外と少ない。いつもならひっきりなしに呼び出しチャンネルにCQが飛んでくるのだが、今日はほとんど飛んでこないのである。もう師走も近づいた忙しい土曜日の朝、ノーテンキにCQなど出しているのは当局ぐらいか?(笑

10時を過ぎてからは11mの方も穏やかになり、海外ノイズもかなり静まってきた。しかしぶどう峠に到着したTN39局以外全く入感はなく、R5はまさしくロングウェイト状態だ。淹れていたコーヒーも既に5杯目に達する。「あら~コーヒーがいい香りね~」と、棒ノ峰からの女性ハイカーが最後の山頂へのふくらみを踏みしめながらやってくる。確かに淹れたてのコーヒーが、なんとも言えない香りを放ちながら、めずらしく拡散することもなくあたりに漂っている。「あたしたちもここで飲んで行きましょうよ~」、とどうやら反対側のベンチでコーヒーの支度に入るようだ。そうする間も依然R5は静かなままなので、山頂にはそれぞれゆっくりとしたコーヒータイムが流れる。

風はない。木々の枝々も静かだ。空は相変わらず深く青い。ただ、角度のない、冬の日差しが少し南に回り始め、地面に届かないまでも山頂の道しるべを照らし出していた。


何とはなしにゆったりできます

この黒山は、眺望が良いわけでもなく、標高も高いわけでもない。山頂というより尾根の一角といった感じだ。ベンチがなければここに滞留することなくハイカーはみな通り過ぎていくことだろう。木々に囲まれた、別に何の変哲もない場所なのだが、なぜか当局的にはゆったりできる場所だ。快晴と初冬の明るい日差しが、そう感じさせるのかもしれない。

ここは奥武蔵のハイキングコースの中でもそれほど知られたルートではなく、むしろかなりマイナーだ。ここがハイキングルートになっていると思っている人もほとんどいないだろう。にも関わらずひっきりなしに人がやってくるのは事実で、さすがに首都圏のハイキングスポットを結ぶ位置づけにあることだけは間違いないのである。


DCRでは、栃木県の赤薙山から、とちぎJJ69局からのコールバックがある。標高2,000m近辺の山頂から、ようやく樹林帯に入られたところのようで、木々の間を歩いているせいか、時々瞬間途切れるものの、電波はFBに到来してくる。気温はマイナス4℃、もう、すでに下山途中・・・人それぞれの時間が流れているようだ。

一方、R5といえば・・・、折角の久々の稼働なのに、昼を過ぎてから大山(神奈川県伊勢原市)のヨコハマAA815局と、堂平山移動のトウキョウAB625局とつながったのみだ。この分だと、もう2~3回続けて使ってやる必要がありそうだ(笑。

運用は暇だったので、コーヒーはもう要らないほどたっぷり飲んでいるが、折角名栗の近くまで来ているので、今回もケーキ工房「綵珠」(あず)に寄ってケーキセットを頂いてみる。今日はロールケーキだ。既に傾きだした日が、誰もいない静かな店内に射し込む。部屋には既に暖炉風のストーブが灯され、柔和な炎を明るく揺らしていた。

各局TNX!!



                                               ('14/11)



運用データ
■運用日時・運用場所:
 
 2014年11月15日(土) 8:35~13:05
    
 東京都青梅市黒山山頂(標高842m)
  
■使用&装備リグ:
  CB: ICB-R5(SONY)
  DCR: IC-DPR5(ICOM)+1/4λホイップ
    
■使用電源
  ・乾電池、リチウムイオン電池7.4V/6.2Ah×1


QSO局
11QSO TNX!!  
(敬称略)

11月15日(土)   
さいたまUR2/埼玉県所沢市 55/57 サガミFJ1300/神奈川県相模原市緑区(DCR) M5/M5
ねりまTN39/東京都東大和市M(DCR) M4/M4 ミヤギKI529/栃木県高根沢町(DCR) M5/M5
トウキョウAD913/東京都町田市(DCR) M5/M5 ねりまTN39/埼玉県所沢市ぶどう峠 55/57
ヨコハマKZ123/神奈川県相模原市南区(DCR) M5/M5 さいたまKR50/埼玉県さいたま市荒川土手(DCR) M5/M5
とちぎJJ69/栃木県赤薙山(DCR) M5/M5 ヨコハマAA815/神奈川県伊勢原市大山 55/55
トウキョウAB625/埼玉県ときがわ町 56/59+     



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