動いている時計は時間が遅れる
動いている時計は時間が遅れるという。実際に、正確に合わせた時計を地球上に一つ置き、もう一つをジェット機に載せて、進む時間を比較してみると、飛行機に搭載された時計の時間が遅れることが確かめられているという。(ジェット機程度のスピードだと、遅れはナノ秒(10のマイナス9乗)のオーダー)また、カーナビなどで利用されるグローバルポジショニングシステム(GPS)は、正確な時刻あわせが必要だが、GPS衛星は比較的高速(時速3,300Km)で、かつ、重力の影響のきわめて小さい上空を飛行しているので、速さによる時間の遅れと重力の影響による時間の進みを計算してGPS信号を発している(100億分の4.45秒遅れるよう調整)という。
再び列車を登場させよう。列車の床から天井に向けて、光を放ち、鏡でできた、床と天井の間で光を往復させることを考える。一往復を時間の一単位とし、列車の中の観測者Aと列車の外にいる観測者Bが、この時間の長さを観測する。列車が停止しているときは、観測者Aにとっても、観測者Bにとっても、たとえば光の3往復(3単位)は、同じ時間である。列車が等速直線運動している場合はどうか。列車の中にいる観測者Aにとっては、秒速10Kmだろうと秒速1万キロだろうと、別に天井と床の距離が変わるわけではないし、列車が停止時とはなんら条件の変化がないから3単位は停止時と同じ3単位である。
観測者Bが見るとどうなるか。たしかに光は床と天井を往復しているが、列車は運動しているので、一見まっすぐ往復している光は、観測者Bから見ると進行方向に斜めに上下に進行していることになる。すると対角線上に移動する光の距離は、まっすぐ床と天井を結んだ距離より長くなる一方で、光の速さは変わらないので(=不変の原理)、3単位の時間は、列車が停止時より長くなる(伸びる)ことになる。つまり、動いている時計は時間が遅れるというわけである。
これで十分納得だろうか?
このことは、地球の自転を速くしていくと、VKからJA向けに超鋭いビームで発した電波は、宇宙から見るとハワイ方向に打出されるというのと同じようなものだ。実際には、床からまっすぐ発射された電波(光)は、まっすぐ上に飛ぶだけで、やがて左からやってくる列車の壁にぶつかってしまうだけである。なぜなら、床から放たれた電波がまっすぐ上に向かって電界と磁界が相互作用して、自ら推進していくだけなのと同様、光の速度が列車の速度と合成されることはないからである。つまり、仮に光が軌跡を描いたとして、観測者Bから見て、その軌跡は斜め右の対角線上に伸びていくことはないのである。
前述のすべての話は、いかに理論の例示(説明)が難しいかの例にはなるかもしれないが、理論自体がどうのこうのというものではないことは言うまでもない。しかし、我々シロウトにとっては、たまにはこんなことの真偽に思いをはせるのも頭の体操になるのかもしれない。
('11/01)
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