[名古屋市内公園より:六甲からの電波は画面左、塔のような建物の左側の山々(鈴鹿山脈)を越えてやってくる]


当局は、決してアクティブな運用局ではないので、CBを運用中に引き起こされるさまざまな不思議な出来事には、いまだに惹きつけられるものがある。今頃(1月末)になって、振り返ってどうするの?と言われそうだが、「不思議」を切り口に’09年のCB運用を振り返ってみたい。

フェージング
2月、当局はアイチAE126局と岐阜県多治見市の潮見の森(472m)で運用していた。たまたま、つながったナガノJA01局は、岐阜と長野にまたがる恵那山の反対側、長野県側(豊丘村)の超見通し外から運用されていた。彼の局の信号はQSBを伴っており、5秒くらいのなが~い周期で電波が強まったり弱まったりしている。聴感的にはS0に等しいところからS3ぐらいの振れの感じである。短波ラジオのような不規則なフェージングではなく、サインカーブを描くような、どちらかというと規則的な「きれいな」QSBだ。いくら山岳回折とは言え、このまったく有り得そうにない場所から信号が聞こえてきたことと、通常のグランドウェーブでこのようなフェージングに出くわしたことは不思議な体験だった。交信できたということは、確かにどこかで回折しているには違いないのだが、この回折とフェージングは密接なつながりがあるように思われた。
一月後、二局で同じ場所から再現実験を試みるチャンスがあった。しかし、今度は全くウンともスンとも言わず、フェージングどころか、信号の断片すら決して聞こえてくることはなかった。(むしろその方が自然ではある。)

東京地区では、いたばしAB303局さんが、毎週のようにロールコールを実施されている。11月のその日、キー局は神奈川県伊勢原市の大山から運用され、当局は東京都東村山市の住宅街から参加しようとしていた。当局の運用場所は地面、すなわち地上高は0メートル、もちろん平地の住宅街の真ん中なので、大山に対する見通しなど全く効かない。それでも入感場所を探ると、住宅街の家並みの回折で52~53で聞こえてくる場所がピンポイントで存在する。住宅街の真ん中なので、周りは至近距離の障害物だらけで、こちらから飛んでいく電波はかなり減衰するだろうと思われるのだが、それでも応答すると同等以上のRSレポートが返ってくる。「何か不思議なフェージングがかかってますね」、という303局のレポートに、潮見の森でのJA01局との交信を思い出していた…。
回折波は、基本的には回折前後の直接波と反射波が合成されるものなので、信号の位相の関係でフェージングが起こり得るのだろうが、それでも実際に体験すると奇妙な感覚に晒されるものである。…少なくとも、当局は。

集束・反射
おなじくこちらも、板橋ロールコールでのできごとである。
12月のある日、例によってAB303局による、神奈川県大山からのロールコールが行われていた。当局はいつものように、東京都西東京市の単身寮2階の屋上(2階なので高さはない)からチェックインしようとしていた。見通しと思われる屋上では87RでS2程度を振っている。屋上の入感ポイントをいろいろ探し回ると…なんと台に乗って、屋根の切れ端にリグのアンテナを持ってくると、Sが6に跳ね上がる!この建物自体は三階建てで、部分的に二階の屋根上が屋上になっているので、三階部分の屋根の切れ端にリグを持っていくことが可能なのである。見通しである屋上より、「見通し外」の屋根の切れ端の方が、断然信号が強力になる。しかも信号が飛んでくる「受け面」の屋根ではなく、反対側の陰になる側の屋根である。信号を水に喩えると、イメージとしては屋根の横長の頂上部から、幅広の滝のようになって水がまとまって落ちてくるようなもの、のように思える。言わば、屋根がなければ、そのまま下に落ちてしまうような水が、屋根のせいで落ちずに屋根の上をまとまって流れてくるかのごとくである。
ただし、これは当局のイメージなので、合っているかどうかはもちろん不明である(笑)。しかし、この違い(=見通しか、屋根の隅っこか)は半端でないことだけは事実だ。(飛びも同様に跳ね上がる)


大山は、画面上端左側方向。
屋根の「峰」を越して、電波が流れ来る。

リグの位置は、アンテナの根本が屋根の高さになる時がベストとなる。

理由はともあれ、差異は絶大のものがある。

同様に電波がある種の塊のように感じられた瞬間が関西OAMだった。
兵庫県六甲山からは、毎月えひめCA34局さんをキー局としてロールコール、「関西OAM」(オンエアミーティング)が行われている。当局は、以前から自宅近くの名古屋市内の公園からチェックインを狙っていたが、いつも31程度でCBLはできるものの、呼べど叫べどこちらからはなかなか飛んでいかずに、QSOは成功した試しはなかった。したがって、向こう(高い側)から飛んではきても、低い平地側からの山岳回折波は、六甲山まで飛んでいくことはないものと諦めていた。(土台、名古屋と神戸間である)

11月の夜開催のその日、いつもの通りCBLだけでもしようと、OAMが始まる10時ちょっと前に、チャンネルを何気なくチェックすると、CA34局の電波が全く「普通に」聞こえてくる。???半信半疑でコールしてみると、一発でとってもらえる。ん~マジか?RSは51/51で交信上まったく問題ない。聴感的にはS2程度である。
実はその前回のOAMより、9エリア側のチェックイン局を拾おうと、キー局側ではそれまでより少し位置をずらして運用されており、今回も六甲山山頂三角点側から運用されていたようだった。そのことが功を奏したらしい。

この公園は基本的には霊園で、夜開催(冬以外)の関西OAMにお墓の真ん中から不気味な雰囲気下で運用していた、今までの数年間の苦労はなんだったのだろう(笑)と拍子抜けの感があるが、一方で、キー局が同じポジションから運用される限りにおいては、自宅近くから毎月チェックイン可能になったというのは「名古屋市内からのチェックイン」にこだわり続けていた当局にとって、2009年の大きな収穫だった。同時に、回折波において、「飛ぶ力」における飛び側の高低差の大小は、ほとんどまったく関係ないことを、あらためて認識した。(当たり前だが)

ところで、六甲からの電波は、他の回折波同様、敷地内で信号が強くなるポイントとそうでないポイントが出てくる。また、この公園には大きなお堂があり、このお堂の壁面を背後にして信号をさぐると、特定の場所で信号強度が若干強まる。壁面による反射ではないかと思われるが、回折波のルートは実際には複雑であるので、それがお堂の反射による影響なのか、単に回折波の合成場所の違いによるものなのかは定かではない。

名古屋市内の公園
公園の一角
このロケでは、この平らな敷地部分全体で
QSOは可能。(右から二つ目のベンチの前が
FB)
お堂
壁が反射板になるのか?
お堂フェンス右端から3m近辺左がFB。
電波の到来方向は画面右から。

7月初旬、沖縄県与那国島より移動運用を行った。当地での初運用として、西崎展望台に行ってみると・・・とうきょうGV9局がなんと運用されている。運用当初は雨がポツリポツリと時々落ちていたせいか、展望台の屋根の中からEs運用をされている。GV9局にお話を伺うと、「外とかいろいろ試してみましたが、この方が一番飛び受けがいいみたいです。」とのこと。展望台の内部で斜めになった屋根に向かってアンテナをまっすぐに伸ばす・・・受信はともかく、イメージ的には屋根にほとんど飛んでいく電波を邪魔され、いかにも飛びそうにないのだが(笑)・・・。しかし、やってみると確かに問題なさそうだ。GV9局はとうきょうAD88局とも交信されていた(その時点でしずおかDD23局と交信済み)。昼間の時間帯ということで、更に交信が成立することはなかったが、当局は夜になってそのスタイルで運用してみた(笑)。リグから屋根へ、屋根が電波を束ね地面へ、そして地面から空へ放射するイメージか・・・。これもイメージだけでなんとも言えない。


夜のDXタイム後半に入ってから、再現。

屋根(上の白い部分)が外側にせり出してしているため(しかも斜め下に向かって)、アンテナの上部はすっかり覆われた形になる。

当局はこの状態での交信はならなかったが、少なくとも受信は全く影響がなかった。

グランドウェーブ

2009年はイベントデーで通常のグランドウェーブによるDXが続出し、いよいよ400Km、500Kmが当たり前の世界になったことも特筆すべきことだろうか。9月の秋の一斉では、長野県烏帽子岳の当局にも愛媛県瓶ヶ森で運用中のフクオカAB182局がFBに入感していた。

400Km以上の距離になると、当然見通し内での直接波はあり得ないので回折波になるわけだが、距離が伸びると回折ポイントも多く、単純な回折波として片付けることはできない。少しつぶさに解析すれば、面白い結果も出るかもしれない。距離が伸びる要因の一つには、運用日における地表面と上空の温度差による大気の屈折率の影響等も考えられるが、7月と9月のイベントデーで同様の場所同士のDX記録が出ている(つまり、いつでも交信可能と思われる)ので、その運用日の気象条件に依存すると見るには限界があると思われる。ただ、屈折率については交信可能な時間帯等も見てみる必要があるだろう。

烏帽子岳では奈良県天川村の八剣山で運用されていたミエAC129局の信号がS8を振ってきていた。距離は、たったの(笑)260Km程度だが、この距離でどうしてS8を振らせることができるのか、伝播の興味はまだまだ尽きることはない。


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