[権現山山頂より 富士]


権現山

朝、山頂までやってくると、富士山が、どでんと構えている。時折薄日がさす地上、そしてガスのほどけた山容が視線を釘付けにする。雪の残った上半身が、空と雲とに融和するようだ。(=冒頭写真)

権現山(標高1,312m)は上野原市(山梨県)中心部から見て西北部に位置する山である。名前から推察される通り、山頂直下には立派な祠があり、日本武尊が祭ってある。

上野原というと、中央高速の渋滞情報などではお馴染みの地名だが、とくに有名な観光地があるわけでもなく、ほかの部分は意外と知られていない。ただ、ほかの県などでもそうであるように、山梨県にも百名山というものがあるらしく、この権現山もその一つで、少し南にある扇山とともに比較的山名としては知られた山である。もともとここは春オンで移動を予定していたロケだが、当局の引っ越しのごたごたで運用自体ままならず、延び延びになっていた場所だ。界隈では比較的知られた山でもCB運用はほとんど行われていないようなので、例によってマイナーな場所狙いでの移動である(笑。

マイナーな場所狙いと言っても、無線をやる以上は全く展望のない山頂から運用するつもりはない。その点、この権現山山頂は比較的展望が開けており、十分に合格点である。富士山もなかなか絵になるほどのロケだ。


山頂
朝、まだ雲は多いが、隙間から覗く日差しが長い影を造り出す。




笹尾根越え


本日の無線装備は、R5と87R、そしてデジ簡のみと軽量装備だ。荷物をすべてほどく前に、まずは87Rで準備体操代わりにコンディションチェックとお試しのCQだ。・・・スイッチオン、ロータリースイッチを回してみる。一通りチャンネル内は静かだ。QSOは聞こえてこない。最近のOADは朝6時を過ぎても静かである(笑。声を出すのが躊躇われるくらいだ。遠慮がちにCQを出してみると、本日1発目、関東に遠征中のえひめCA34局から応答が返ってくる。CA34局は堂平山移動(埼玉県)で、この時間でもワッチに抜かりないところはさすがだ。CA34局とはいつもEsや2エリアでのQSOなので、1エリアでのグランドウェーブは新鮮だ。続いてイバラギAB110局(常陸太田市)、フクオカYK426/1局(筑波山中腹)など茨城方向とよくつながる。

権現山運用の狙いは何かと言えば、2月に運用した「笹尾根」越えで埼玉、栃木、茨城方面をねらうことである。笹尾根は、東京と神奈川、東京と山梨の両都県境を形成する稜線で、権現山から見ると北東方向に連なることになる。権現山はかなり山梨の陸側に奥まった場所に位置するので、一見すると笹尾根に阻まれて飛び受けが余りよさそうにないロケに見える。ただ、笹尾根の標高は平均1,000m前後、この権現山は1,300mなので、笹尾根越えで十分いけるだろうとの読みだったが、想定通り結果的に笹尾根越えは問題ないようだ。山頂は富士山方向と同様に、北東側も木々が開けており、この点でも笹尾根越えで電波を飛ばすには都合が良いのである。成田市からはチバYN515局、つくばみらい市からは、つくばAM680局などとつながる。

ひと段落して、3Ch で待機していると、ポータブル7、フクシマコールのCQが入感してくる。ふくしまFD55局だ。直感的に距離はそこそこありそうだが、耳S52程度で信号は全く申し分ない。ロケは福島県二本松市とのことで「ハヤマ」(=麓山(羽山))という山らしい。そんな名前の山は聞いたことがないので、標高は高くはないはずだ。その割には、よく二本松市から飛んでくるものである。後で調べてみると、距離は254.5㎞ほどで、やはり完全な見通し外だ。それでも飛んでくるところが電波の面白いところである(笑。(下図) 麓山は897m程の標高があるようなので、光学的には確かに見通し外だが、間が真っ平なら平均的な大気の屈折率を考慮すれば電波的にはぎりぎり「見通し内」(=電波上の見通し距離は約274㎞)ということになる。実際には、間は真っ平ではないが屈折で飛んできている可能性が高いと思われる。

因みに、「日本山名事典」に出てくる「はやま」という名の山は全国で26件ほど、多くが「羽山」だが、岩手から福島にかけての5山だけが、この「麓山」という表記であるので、この地方に関連した独特の呼び方なのかもしれない。


山頂より

笹尾根方向
笹尾根生藤山方向。右手前、電波
塔があるのは雨降山。
雲取山方向
雲取山(中央やや右三角形)~
飛龍山(中央やや左)
麓山(左)-権現山(右)
こんな見通し外から電波は飛んで
くる。



房総半島もOK

このロケのもうひとつの特徴は、意外と房総半島方面への飛びもいいことである。これは、「山梨県」という、陸地へ奥まったイメージからくる先入観がそう思わせるのかもしれないが、実際には、南端の南房総市(チバCB750局)、中央部の袖ヶ浦(イチカワHK070局など)、北は幕張(トシマAB134局)といったところまで、隈なく飛ぶようである。標高ゼロメートルでもOKである。ちば6455局もそんな局の一つで、木更津の平地から55で飛ばしてこられる。コールは昔の電監コールのようで、最近昔懐かしいCB機をたまたま手にし、久しぶりに出られているようである。今日は特に、イベントデーということを聞かれて出てこられたらしいが、「CBのチャンネルがこんなに一杯埋まるなんて・・・」と感無量のようである。何気ない一言ながら、当局にもその喜びがよく伝わってくる。リサイクル店で偶然入手されたというリグ、木更津の平地からあまりにしっかり飛んでくるので何をお使いなのか気になる。お聞きすると日立のCH-580とのことである。CH-580は地味で目立たないリグだが、意外と実力派なのかもしれない。房総半島からは鋸山のセタガヤCBR250局とも後でつながっているが、耳Sでは58くらいで強力入感してきていた。


新緑の運用

 
 
 

今日はCBメインの運用で、CBの合間にDCRを運用するという方針だが、実際はCBの信号がほとんど途切れることはないので、仮にDCRを運用したくてもなかなかできないという状況が続く。DCRの呼び出しチャンネルからCQがよく聞こえてくるのだが、CBの運用中で出られないことが多いのである。しかしCBメインのつもりだったのなら、もう少しバラエティに富んだリグを用意すべきだった。横須賀の大楠山にはかながわCG61局が、お馴染みの玩トラで出られており、なんとR5のSメータを2まで振らせてくる。経ヶ岳(神奈川県愛甲郡)にはかながわYS41局が50mW運用されており、こちらも全く問題なくQSOできる。変調もなかなかのものだ。当局もGT-06や52Aを持参すべきだったか・・・?(笑。

権現山はここらあたりでは一番高いので、周りの山々が海のようだ。山は今新緑に萌えている。薄緑色の木々の葉が山のそこかしこに一塊となって若々しい生命感を一杯に湛えている。9時ころになると富士山こそ周りにガスがでてきて、その姿は隠れてしまったものの、天気は完全に上り調子で、日がさんさんと輝き始めてくる。すると新緑はいっそう鮮やかさを増してくる。アサイチはどんよりと雲が多く一日持つかどうか心配だったのが嘘のようだ。実際昨日の天気予報でも曇り時々小雨という予報だったが、よい方向へはずれてくれた。権現山はこの近辺では比較的名が売れた山で、しかもGWということで、山頂へは次々とハイカーがやって来るのではと思いきや、こちらもはずれ。ほんの時たま5人ぐらいのグループがやってくるだけだ。しかも半分以上は、登山コースのバイクラン(自転車)である。山頂部分だけは急登になっているので、さすがに自転車は直下の神社のあたりにデポしてやってくるようだ。


R5も新技適が欲しい・・・(笑

最近はR5を意図的に多用しているが、やはり圧倒的に音は聞きやすい。音量を上げてもノイズは上がらないので、実効的なS/N比が高い。そこがこのリグの一番の強みだ(770も同じ)。しかも復調音の線が太い。微弱信号を捉えるのにはもってこいである。また、OADなどの長丁場では聴き疲れもしないので、その点でも有用だ。R5で新技適が可能になればなぁ~と願っているのは、おそらく当局だけではないだろう。このままだと平成34年で使えなくなる。それまで思いっきり使ってあげるしかない、というのが最近多用している所以なのである。

権現山から神奈川方面への飛び受けはどうなのか?前回笹尾根の茅丸から運用した時は横浜中心部方面への飛びが今一つの感じがしたが、今日はOADということで運用局も多いせいもあるが、神奈川方面全般に北は川崎から南は大山方面までかなり広角に、むらなくカバーできるようである。そういう意味では関東平野の一都五県(神奈川、千葉、埼玉、茨城、栃木)を広範囲でカバーできそうな感じだ。群馬方面については、渋峠に移動されていたねりまTN39局とのQSOのみだが、ロケの実力によるものなのか、群馬方面の運用局数によるものなのかは更に運用してみなければ分からない。

今回は、交信数は一応60を超えている。交信したくても応答できなかった局が多々あったり、コーヒーでくつろぎながら適当に運用していてもこの程度なので、まじめに運用すればもっといけるのかも知れない。そういう意味では権現山については、あるていど想定通りの飛び受けを確認できたと思われる。ただ、笹尾根、権現山周辺の山域ではまだまだ運用してみたいロケもたくさんあり、更に確認を続けたいところである。


各局TNX!!
                                               ('15/5)




運用データ
■運用日時・運用場所:
 
 2015年5月4日(月) 6:20~13:20
     権現山山頂(標高1,312m)
    
 山梨県上野原市

■使用&装備リグ:
  CB : ICB-R5(SONY)、ICB-87R
  DCR: IC-DPR5(ICOM)+1/4λホイップ

■使用電源
  ・乾電池、リチウムイオン電池10.8V/2.4Ah


QSO局
61QSO TNX!!  
(敬称略)

5月4日(月)   
えひめCA34/埼玉県比企郡堂平山 53/53 イバラギAB110/茨城県常陸太田市里見牧場 52/53
サイタマBE978/埼玉県草加市 53/53 フクオカYK426/茨城県筑波山つつじヶ丘 57/54
トウキョウBI275/千葉県袖ヶ浦市 54/57 イチハラHK070/千葉県袖ケ浦市 52/53
チバYN515/千葉県成田市 51/52 ふくしまFD55/福島県二本松市麓山 51/51
ツクバAM680/茨城県つくばみらい市小貝川(DCR)  M5/M5  カナガワFJ251/神奈川県逗子市大崎公園  53/55 
とうきょうSS44/埼玉県飯能市有間峠  51/51  かながわCG61/神奈川県横須賀市大楠山  52/M5 
ツクバAM680/茨城県つくばみらい市小貝川  51/51   しょうなんJH16/神奈川県伊勢原市大山  52/52 
サガミFJ1300/神奈川県相模原市城山湖  58/59  ナゴヤAB449/神奈川県横浜市  52/53 
おおさと59/長野県川上村  51/51  イバラギER501/茨城県常陸太田市(DCR)  M5/M5 
ヨコハマFUR98/神奈川県横浜市保土ヶ谷区(DCR)  M5/M5 ヨコハマAD195/東京都八王子市  53/59 
かながわYS41/神奈川県愛甲郡経ヶ岳  51/M5  ミナミタマFN533/東京都八王子市影信山  53/53 
ながのCW47/神奈川県相模原市城山湖  52/51  かながわTM34/神奈川県相模原市南区  53/57 
イバラギAO35/茨城県筑波山  57/55  トチギCB870/栃木県太田原市御亭山  51/M3 
かながわCE47/神奈川県相模原市城山湖   57/57 ちば6455/千葉県木更津市  55/53 
ヨコハマAA105/静岡県富士山須走口五合目  54/53  トウキョウAB923/茨城県土浦市朝日峠  55/53 
とうきょうGV9/東京都八王子市景信山  55/56  しょうなんえぼし1/神奈川県茅ヶ崎市  53/53 
とうきょうCC36/東京都八王子市城山(小仏)  52/54  サイタマQBM254/埼玉県新座市  52/53 
ヒョウゴAB337/東京都東久留米市  52/52  かわさきHA71/東京都青梅市日の出山  55/57 
ヨコハマKZ123/神奈川県横浜市保土ヶ谷区  52/53  チバAC471/神奈川県葉山町湘南国際村  52/M5 
サイタマST165/茨城県筑波山  52/53  カナガワAF39/神奈川県川崎市東扇島  52/52 
よこはまUQ3/神奈川県平塚市湘南平  53/53  サイタマKK007/埼玉県吉川市江戸川ナマズの里  51/53 
ブンキョウRK708/東京都文京区? (ヘリカル機)  41/M5  サイタマUJ120/埼玉県秩父市武甲山  55/55 
イバラギSO47/茨城県筑波山  57/55  よこはまJN68/神奈川県横浜市円海山  54/53 
トシマAB134/千葉県千葉市幕張海浜公園(DCR)  M5/M5  ねりまTN39/群馬県中之条町渋峠  51/51 
サイタマMS118/山梨県甲州市大菩薩嶺  57/59  さいたまBB85/栃木県佐野市三毳山  52/57 
チバCB750/千葉県南房総市  52/55  カナガワKG403/神奈川県川崎市多摩区  53/55 
ヨコハマNM273/神奈川県横浜市円海山  52/54  トウキョウAB625/東京都立川市昭和記念公園  52/54 
イバラギHS911/茨城県加波山(DCR)  M5/M5  トウキョウAB923/茨城県土浦市朝日峠(DCR)   M5/M5 
サイタマMG585/埼玉県志木市(DCR)  M5/M5  サガミFJ1300/神奈川県相模原市城山湖(DCR)  M5/M5 
トウキョウAD913/東京都青梅市日の出山(DCR)  M5/M5 とうきょうHM61/東京都羽村市(DCR)  M5/M5 
セタガヤCBR250/千葉県鋸南町鋸山  55/55     



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権現山(GW一斉OAD)
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