Sの横顔



CB機を握る人の心を掴むものは何か?

トランシーバーのデザインの決め手の一つはSメーターであろうか。Sメーターがあることで、いかにも無線機といった誇らしげな顔つきになる。Sメーターがついていない機種は、逆説的に、Sメーターが付いていない(付かない)ことでデザインが決まるが、今ひとつ物足りなさを感じることになる。

RST(フォーンではRS)のSについては、いろいろ議論がある。すなわち、Sとはメーター指示値を読むのではなく、聞こえたときの信号強度を分類にしたがってランク付けするのが本筋であると。なにやら地震の震度のようなものだ。

ごもっともではある。

考えてみれば当たり前の話ばかりだ。昔の無線機にSメーターなどなかった。RSTのRは主観による定性的なものだし、Tに至っては、昔はたしかに音の聞こえ方をレポートすることで無線機の調子や運用状況をしらせるという重要な機能だったのだろうが、それを測るのは感性以外の何者でもない。Sだけ機械が読み取った数値を定量的にコールするというのは、その生い立ちからすると非合理である。仮にメーター読みを自負するとしても、SSBなどではキャリアがないから針が振れまくるのに、59とか57とか即座に答えているわけだから、それはいい加減なものである。要は、結局は「耳S」なのである。

さりとて、Sの9段階を復唱できるかと言えば、そんなこともない。(爆)復唱できたところで、個人差があるし、正確に言おうとしようものなら、どのレベルかあてはめているだけで日が暮れてしまう。(笑)あくまで感覚の世界だ。

「770なのでSの振りがわるいので…」、「Sメータがついてないので、耳Sでは…」とか言うのは、かく言う当局もその一人だが、本来邪道なのだろう。しかし、Sメーターは、少なくとも同じリグで他局の機種(特に多機種)を評価する場合の相対比較としてはかなり有効である。

我々がSメーターに本当に期待しているものは何なのだろうか?

アマチュア機などでは、最近のSメータはデジタル化(ドット化)されてしまって面白くないと言われる方もおられる。
とは言え、部屋の電気を消してぼんやりと火照った770のSメータを眺めていると妙な落ち着きを覚えるのは末期的な症状だろうか?しかしこの気持ちは、真空管アンプの灯をぼーっと眺めているオーディオファンにはおそらく分かってもらえるだろう。(笑)それでも同じく末期症状には変わりない?

今年6月の波照間島のサトウキビ畑は真っ暗闇だった。暗闇などで運用していると、87Rにもメータ照明がついていたらなぁ~と思うことしばしばである。


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