[報国寺にて]


そうだ、鎌倉行こう!


天気予報通り暖かくなった土曜日の昼下がり、ふと思い立って、鎌倉に行きたくなってしまった。「そうだ、京都行こう」というJRの集客キャンペーンコピーがあったが、「そうだ鎌倉行こう」、である。鎌倉でもお気に入りの場所の一つである報国寺に、久しぶりに行ってお茶でも飲みたくなった。せっかく鎌倉に行くなら、その前に運用をと、翌日の運用に備えそそくさとリチウムイオンやニッケル水素電池の充電に取り掛かる。日曜も天気予報では暖かくなる…とのこと。

運用場所は北鎌倉にある六国見山(ろっこくけんざん)である。しかし、なぜ六国見山なのか?運用という意味ではある程度の高さが必要だが、別に六国見山でなくとも鎌倉の背骨を走る「鎌倉アルプス」沿いの見晴らしの効くロケでも良いわけだし、太平山でもよいはずである。ただ、ある場所に赴くからにはそれなりの目的がある。報国寺に行くのが、ゆるりとした時間の中で(笑)くつろぎながらお茶をいただくことが目的であるように、その場所を訪れることである人物の足跡をたどること、つまり、そのとある局と同じ地を踏むことによって、その時にどのような思いでそこに佇んでいたのか、といったことに思いを巡らせるというのも一つの目的のはずである。

鎌倉は高校生の頃から通いつめていたので、寺社仏閣はもちろん、街の隅々まで熟知している(…つもり(笑。) ただ、六国見山だけは初めて訪れる場所である。ちなみに、どうでもよい話だが、当局の家系のルーツは、鎌倉・室町時代の鎌倉にある。当局の名前をご存知の方は、すぐにお分かりと思うが、今も鎌倉に残る、とある地名が当局の苗字そのものでもある。


六国見山

9時過ぎの横須賀線で北鎌倉の駅に降り立つ。六国見山は円覚寺の裏手に当たるが、境内からは登れないので、大船側から回りこんで登ることになる。登ると言っても、住宅街から森林公園へとつながる単なる散歩道で、北鎌から20分ほどで展望台に到着する。(正確には、いわゆる山頂は別の場所にある。)天気予報の割には肌寒く、空も厚い雲に覆われており彩りも少ない。気温の割には寒さを感じさせる空模様だ。

かつて、とある局も運用していたであろう展望台に立ってみる。西方向の大山は木々の梢で半分以上は見えないが、平塚方面はよく見えている。今日は雲が多く霞んでいるのであいにく富士は全く見えないが、箱根、そしてその先の南アルプス方面へは電波の飛び受けが抜群の印象を受ける。南には鎌倉の中心部が、森の向こうの盆地に白い一群の塊となって、そして、その先には材木座の海岸が顔を見せている。
展望所の柵は手ごろな高さで、頬杖をつきながらQRVするにはちょうどよさそうだ(笑。

鎌倉中心部方面
南アルプス烏帽子岳方面


「『鎌倉CQ』つったって、何のことだか全然わからないよなぁ~」と自嘲しつつ、リアル板にQRV情報をインプット。しばらく3ChでCQを出してみるが、天気予報に反して、意外と気温が上がっていないせいか、移動局は皆無だ。海外局も予想外に静かで、時折5Chで英語局が、6Ch近辺でロシア語が聞こえてくる程度だ。しかしこの静けさに、なんとはなしに、このまま運用していてもいつまでたってもだ~れも出てこないような雰囲気が伝わってくる(笑。こんな時はやはりDCRの出番か?坊主対策に積極的に使うつもりはないが、最近市民ラジオの状況が余り芳しくないような・・・。というよりDCRが賑わっているというべきか?

DCRのCQにはすぐに応答がある。当方の標高は130mほどで北方向は木々が障害になるが、トキョウスカイツリーKJ1局の信号は、墨田区からアンテナ2本で強力入感してくる。今日は長野県の霧が峰(車山)からいたばしAB303局さんがロールコールを実施されるが、受かるのか受からないのかチャレンジされるため、それまでDCRで待機されるようだ。

川崎市の枡形山からは、ふくおか8774局のCQが飛んでくる。当局とは反対側の北斜面から出ておられるようだが、アンテナマークは出ないものの1Wでも十分な入感だ。(その後2W出力ではアンテナ2本となる。)ナゴヤAB449局もアンテナ2本での強力入感である。2階の物干しに吊るした1/2λホイップからケーブルを引っ張って1階から出ておられるようである。さすがはDCRで、CBと違って固定局ともつながるところがミソである。

とはいえ当局の運用のメインは、あくまで市民ラジオである。3Chで定期的にCQを畳み掛けるのだが、やはりシ~ンとした空気が痛々しく伝わってくるのには変わりない。運用から2時間経ち、ようやく相模原市のかながわCE47局よりコールを頂く。CE47局も時折CQを出されていたようだが、全く運用局の気配が無く、当局とつながってなんとか坊主を免れたと言われている(笑。当局にとってもCE47局が今日つながった最初の局であるので、全く同じ感覚である。相変わらずぐずついた空模様で、先週一週間と比べれば寒さはまだマシだが、どう考えても今日はアウトドア移動日和ではない。ただ、「まあ、でも、子供の頃の冬の方がもっと寒かったですよね~」と言われるCE47局には同感で、「小さかった頃の冬」の方が雪ももっとたくさん降ったと記憶している。

六国見山は標高が低い分、グランドウェーブで交信レンジを稼ぐようなロケではないが、それでも午後に入ると聞こえる移動局が増えてくる。城山湖からはとうきょう13131局が出てこられて久しぶりのQSOとなる。平塚漁港ではカナガワFK66局が釣りをしながら、のんびりと?宮古島から、おきなわMY385局が入感してくるのを待ち受けているようだ。釣りと相通ずるところがあるのだろうか。固定?としては、横浜市戸塚区の自宅ベランダからショウナンTS290局にコールを頂く。CBについては、まだ開局されたばかりのリグのようだが、信号も変調も全く問題なく入感してくる。

今日はパーソナルも持参しているが、DCRとは反対に、パーソナルの方は全く反応がない。一度だけ、「お借りしてま~す」というレスポンスが、チャンネルチェックに返ってきただけである。この標高で1Wハンディ機なのでやむを得ない面もあるが、それにしてもDCRとは差がありすぎる。チャンネル内をサーチしても時折かろうじて1局聞こえる程度だ。やはり無線機の趨勢を物語っているのか?今日のCB以上に寒いものを感じる。

今日のような冬の日は、午後から移動局が増えることは当局も理解しているが、本日のもうひとつの目的は報国寺に行ってお茶を飲むことである。適度な時間で切り上げねばならない。このロケは、海が、青く光り輝く時分に、もう一度運用してみたいポイントだ。まだ名残惜しいが、14時を回ったところで撤収の準備に入る。






身を躍らせて…

あとはとにかく、真一文字で報国寺に向かうだけだ。

下りは山の中の「ハイキングらしい」山道である。建長寺方面へ出るためには、一般的には、「あじさい寺」として有名な明月院の前を通過するのが教科書通りのコースだが、途中で獣道のような道へショートカット、明月院前を経ずに北鎌の踏み切り近くに到達する。(=殆どショートカットになってませんが?)建長寺を取り過ぎ、おいしそうな、あまたあるコーヒー専門店にはわき目も振らず、まっすぐと突き進む。まるで盲導犬のようだ。鶴岡八幡の西脇の階段から本殿前を突っ切り東脇の階段から国大小学校(横浜国大付属小学校)前へと、おみくじ待ちの行列を蹴散らし、風を切ってイノシシの如く境内を突き抜ける(=盲導犬ではなかったのか?)。こんなショートカット、鎌倉の隅々まで知り尽くした当局だからこそできる技か?(=いえ誰でもできます(爆) 途中、「『これじゃイチロ日産』じゃなく、『イチロ報国寺だなぁ』」、などと、わけの分からないオヤジギャグ?が頭の中を飛び交う。
鎌倉でも最古のお寺である杉本寺をぶっちぎりで通過(=っつたって、歩ってるだけでしょ?)、しばらくして右折すると報国寺だ。

急いだ、と思しき割には既に午後3時を回っている。朝、家を出てから最終目的地到着まで7時間半も経過しているではないか・・・一体どういうこと?(笑

そんなことは横に置いといて、報国寺ではゆったりとした時間に浸る。(浸ったつもり)
報国寺は竹の寺として有名で、禅寺らしいひっそりとした佇まいが今日一日の心を鎮めてくれる。(=まだ一日終わってませんが?) 竹の庭園を眺めながら、ゆっくり茶店でいただくお抹茶は格別な味わいだ。(=久々に『違いの分からない男』の登場か?)





なぜ六国見山なのか?

ところで、世の中にはお世辞とはっきり分かっていても、掛けられるとうれしい言葉がある(笑。「一期一会のQSO」という言葉がそれで、当局が昨年西表島から運用した際、つながった千葉県在住の某局長さんから授かった言葉だ。無線にはいろいろな楽しみ方があるが、すくなくとも当局はそのような方向性を少なからず目指しているので、その言葉を贈って頂いた、その局長さんには今も感謝している。

実は、ここ六国見山は、「よこはまR16」局とつながった場所だ。(R16局側運用地。)
3、2エリアの方々には、よこはまR16局というより、「きょうとR27」局と言った方がおなじみの局長さんが多いだろう。3エリアにおられた時はえひめCA34局さんなどの掲示板上でよく書き込みを拝見していた。QSOの方では、2008年のSVで、鳥取・兵庫県境の氷ノ山から運用されており、朝の早い時間につながる。当局は奈良県の大台ヶ原での運用だったが、この日兵庫以西は明け方から悪天候で、マイクがバックグラウンドで風と雨のすさまじいノイズを拾う中、R27局は非難小屋に出たり入ったりしながら運用されていた。

R27局が、1エリアに移られてから初めてつながったのが、ここ六国見山で、2009年4月に当局が箱根駒ヶ岳から運用した時のことである。「よこはまR16」のコールサインで出てこられたので、最初はR27局とは分からなかったが、コールサインの話を伺っていると、旧「きょうとR27」局であることがわかる。R16は横浜を走る国道16号のことだし、もうお分かりのように、R27は、京都舞鶴などを走る国道27号線のことである。その後、2009年の9月に、長野県大鹿村の南アルプス烏帽子岳(2,726m)から運用した際も、鎌倉のR16局とつながっている。鎌倉と言えば標高の高い山などないので、南アルプスからつながってびっくりする。ログには「鎌倉」以上の細かい場所を記し損ねているが、その時も六国見山から運用されていたのではないだろうか。

R16局とのつながりは、この3~4回のQSOがすべてである。当局にはQSOの一つ一つが思い起こされるが、R16局にとっては、そんなことは当然どうでも良い話であり、当局の存在などはおそらく記憶の片隅にも残っていないのではないだろうか。


R16局が他界されたと伝え聞いたのは、その最後のQSOから約1年半後のことである
                                                            ('12/02)



運用データ

  
■運用日時・運用場所:
 
神奈川県鎌倉市
  六国見山森林公園展望台 (標高約130m)
   2012年2月5日(日) 9:40~14:10 
    
■主要装備:
  CB
   ・ICB-87R (SONY)
  DCR351(デジタル簡易無線)
   ・IC-DPR5 (ICOM)+1/4λホイップ (第一電波)
  パーソナル
   ・PR-6 (信和)
  

■電源

  ・Li-ion 7.4V/6.4Ah×1 (DCR)
        10.8V/1.6Ah×1 (87R)
  ・NiMH 7..4V/2.3Ah×1 (PR-6)
  ・ 乾電池 (87R)        

QSO局
CB、DCR
(敬称略)
DCR=デジタル簡易無線、無印=CB
2/5:六国見山 
トウキョウスカイツリーKJ1/東京都墨田区 (DCR) M5/M5 ふくおか8774/神奈川県川崎市枡形山 (DCR) M5/M5
ナゴヤAB449/神奈川県横浜市 (DCR) M5/M5 カナガワZ489/神奈川県横浜市港南区 (DCR) M5/M5
かながわCE47/神奈川県相模原市 53/54 にしたま123/東京都東大和市狭山富士 (DCR) M5/M5
とうきょう13131/神奈川県相模原市城山湖 52/55 かながわFK66/神奈川県平塚市平塚漁港 52/53
カナガワAD505/神奈川県伊勢原市伊勢原総合運動公園 57/57 カナガワAD506/神奈川県伊勢原市伊勢原総合運動公園 57/53
カナガワAD507/神奈川県伊勢原市伊勢原総合運動公園 57/58 かながわCG61/神奈川県伊勢原市大山中腹 54/54
しょうなんJS900/神奈川県足柄上郡中井町 55/58 カナガワAC288/神奈川県平塚市湘南平 58/59+
ショウナンTS290/神奈川県横浜市戸塚区 54/53


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2012運用記
鎌倉(六国見山)
神奈川県鎌倉市