鈴北岳運用 (2008/04/20)

鈴北岳山頂より白山(2,702m)と能郷白山(左、白いピーク):
白山山頂からは、よく、いしかわAS36局が運用される。能郷白山も同局の運用実績がある。




見返り峠

往年のテレビドラマ「木枯らし紋次郎」(笹沢佐保 原作)は、市川昆が監修していたこともあり、画像には随所に映像美が光っていた。冒頭の山々のシーンも日本の山、山といっても丘陵程度の低山だが、の木々に覆われた、陽光に照らされた姿が美しく映し出されていた。

鈴北岳には、三重県いなべ市から滋賀県多賀町に通ずる鞍掛峠からアクセスする。登り始めて30分もすると、朝の陽光に黄色く照らされた、三重県側の低い山々が目に入ってくる。そのとき、唐突に、なぜか何十年も前に見た、「木枯らし紋次郎」の丘陵のような山並みの姿が重なって見えた。「見返り峠」の話では、身売りされていく女たちが、里の裏にある山の峠を越えるときに最後に振り返って自分の生まれた村を眺めるのだ、という、確かそんな設定だった(うろ覚え)。新緑の映える今の季節と映像の季節、時間も異なるが、照らし出す陽光の光加減が、そんなシーンを脳裏に甦えらせたのだろうか。

標高1,000mくらいまで来ると、ガスがかかり何も見えなくなる。雪渓も未だ残っている。たかが1,000mとはいえ、決して馬鹿にならない。二日ほど前の雨でぬかるんだ最後の急傾斜を登りきると、草原上の広い山頂(標高1,182m)に到達する。霧状の空気が適度にフィルター代わりになり、空の青さを際立たせている。ガスの切れ間からは隣の御池岳のピークが流れるように見えていた。


遼クン効果
ザックをおろしてリグをセッティングし始めると、到着を待っていたかのように、あたりを覆い尽くしていたガスもスーと消えていった。北方向には、遠くに聳え立つ石川・福井・岐阜県境の白山が雪に包まれている。その手前には、雪を烏帽子のように頂いた、能郷白山らしき山も見えている。山頂は、この時間まだ登ってくる人もほとんどなく、静かな時間が流れていた。

まず、サブ機として持参したICB-880Tでコンディションを確かめてみる。さすがに街中とは異なる。ノイズは全チャンネル僅少、絶好のコンディションだ。下界?では使い物にならない7Chも使えそうだ。9:20分、QRV予定時刻より10分早いが、4Chで声を出してみる。朝早い?せいか、リグからはわずかなノイズが流れてくるだけだった。
PR-900でパーソナルをサーチすると、アイチDI209局/名古屋市内固定とギフAA365局/名古屋市内固定の朝のQSOが聞こえてくる。固定同士のQSOにブレークインすると、後から、なごやAD144局モービルもブレークインされてきた。各局Sメーターはフルスケールでの入感である。みなさん、ゆったりした朝を迎えている。日曜日の朝なので当然だが、当局も普段の日曜日なら、朝飯を食べ終わって新聞を眺めている時刻である。何の因果でこんな時間に、こんなところにいるのか? 答えは簡単。それは、CBが楽しいからである。

イスにセッティングしたICB-790Tに戻って本格的にワッチ体制に入っていると、なごやCE79局のCQが聞こえてくる。いつもより渋い変調音だ。桑名市からのオンエアだが、多度方面は「遼クン」効果で大変らしい。男子プロゴルフツアー東建カップが多度で行われているが、16歳の新人プロ石川遼くんが大活躍で、3日目土曜日を終わった段階で首位に立っていた。どうも既にゴルフ場近辺で渋滞が始まっているらしい。
QSOを終えると、京都の深山に移動されているヒョウゴAB245局が、CE79局を呼ばれている。79局のほうではノイズもあり、取りきれないようだが、深山側ではAB245局がRS31で捕捉していた。三重県桑名と京都府南丹市、完全な見通し外だが、これも面白い伝播経路だ。深山は、鈴鹿山脈を越えて、三重県四日市港とQSOできることは確認されている。この日も後から、四日市港移動のイワテB73局が、深山とFBにQSOされていた。

87Hのパフォーマンスは?
六甲山にはヒョウゴAC315局が出ておられる。今日はHSTさんでオーバーホールされたヘリカル機、ICB-87Hを実験されるというので、当局も比較実験に参加してみる。既にとくしまYF99局と実験されたとのことで、87Hでの受信でSが3つ程、ICB-770より良かった?とのこと。この結果には、つい笑ってしまったが、いずれにせよ、受信側は完璧に調整されているようである。六甲と鈴北岳とは、114Km程の距離である。当局に送信してもらうと、ICB-770ではRS55、87HではRS54 でほとんど差はなく、もちろん、QSO上全く問題はない。87Hの抑制された変調が、むしろ聞きやすい感じすらする。
後で、山頂を下った別の地点からこうべJ68局に87Hでお声がけを頂き、交信していると、AC315局も来られたということで、同じ場所から、同じリグで送信してもらうことにする。315局の87Hはオーバーホール済、J68局の方は、未調整である。結果的には315局の方が、Sが0.7~0.5強いという結果だったが未調整の87Hでも十分使い物になることだけは明らかだった。新たにヘリカル時代の到来なるか?(笑

家の中からGO!
YF99局がQRVされていた、という話を聞いて当局も久々に実践投入した880Tの受信感度を確認したかったのだが、AC315局からは、YF99局はもう下山されたかもしれないとの情報を頂いていた。しかしワッチを続けていると、まだ徳島県大川原高原にQRVされていた。ノイズレベルが低いこともあり、Sメーターは3弱で、FBに入感してくる。夜勤明けというハードなコンディション下で次々に各局から呼ばれている。QSOを聞いていると、もう下山されるということで、当局も半分、呼びかけては申し訳ないと思いつつ、しかし呼びかけずにはいられない。この時点で、880Tの受信感度を確かめるという目標は既に達成していたのだが...。YF99局は、昨年11月の当局との1st QSOをよく覚えておられた。復唱されていた1stQSO時の状況は全く言われる内容の通りだった。当局は、奈良・三重県境の高見山移動時の話である。
長く引き止めては申し訳ないので、次回のQSOに期待しながらそこそこに73を送る。終わるや否や、どこかから聞き覚えのある声でブレークがかかる。養老山脈の向こう側、愛知県稲沢市のアイチAE126局である。先ほどまで、自宅近くの田んぼの中から出られていたが、今度は自宅の和室の中でアンテナを伸ばして、送信しているという。驚くことにRS54でバリバリに入感してくる。以前、東北のある局が、家の中からEs QSOに成功したというような話を、聞いたことはあったが、これで「家の中からでもやればできる」、という確信に至った。(笑


880T
久々の実戦投入となる。
790T
ロッドアンテナが、霧の水滴を捕らえていた

お見事!
QRV当初は、日が射し、今日こそは暖かくなって楽勝かと思いきや、山頂が晴れていたのは、出だしの30分くらいで、その後はずっとガスの中、霧の世界でQSOを続けていた。時々790Tのロッドアンテナを確認すると、水滴がかなり付着している。平地移動の各局の情報では、晴れ渡っていて、暑いくらいだという。こちらは別世界、気温11℃ほどで、鼻水をすすりながらのQSOとなる。しかも、時間が経つにつれ、琵琶湖方面からの北西の冷たい風が強まってきていた。久々のQSOとなるヒョウゴ3946局/六甲山とのQSOも中途半端になってしまう。携帯式のダウンジャケットをザックから取り出してQSOを続けるものの、それでも寒い。兵庫県篠山の小金ヶ嶽という山からは、きょうとKP127局が出ておられるが、VOLMET、QSLカード等の話もなんとなく呂律が回らなくなってくる。(各局申し訳ない。)KP127局は、小金ヶ嶽は移動されるのが初めてのロケとのことだったが、周りにも未だよさそうなロケ(山)があるとのことで、次回はどんな場所から出てこられるのか楽しみである。
握り飯を食べながら更にセーターを着込もうと思っていると、えひめCA34局、京都管内よりコールを頂く。今日はラシーバとR-7の二つの「50mW機」を持参されているという。「50みりわった~ず」の面目躍如だが、さっそく両方で送信してもらい受信実験をしてみる。う~ん?、聞こえない。この時間帯、海外からの混信とピー、ヒューというノイズが高まっており、マスクされているようだ。もう一度送信してもらう。お見事!ラシーバのみ聞こえてくる。お見事なのは、50mWで京都管内から電波が飛んでくるからではなく、その変調音だ。入感信号は微小にもかかわらず、その音は非常にハッキリ、クッキリしている。極めて明瞭度が高い。ちゃんと造られた?500mW機でもあまり聞いたことのない性能である。いつも過変調気味にたらたらと電波を流している(であろう)当局などは、大いに反省せねばならない。

気温&高度
14:18分、気温は11.8℃、高度1,170mを指していた。(実際は1,182m)

イベントデー並みか?
13時を過ぎてもまだ続々と移動される局が出てこられる。ギフAC114局が岐阜県土岐市三国山から聞こえてくる。QSO時はRS55での入感だったが、後からワッチしていると場所を変えられたのか、Sメーターは59+を振ってきた。ちょっとしたロケの違い?でずいぶん入感強度が異なる。愛知県西尾市からはアイチHZ76局が、56で強力に入感してくる。朝、パーソナルでQSOしていたギフAA365局は小牧市白山神社に、アイチDI209局が木曽川堤防に、小牧山にはなごやAD144局が、アイチJH316局は池田山に出ておられる。タイミングが合わずにQSOを逸した局も結構おられた。きんきCJ86局、しがAA??局、ながおかHR420局、ナゴヤAM233局、アイチHD01局等々、ちょっとしたイベントデー並みの移動状況である。伊勢湾を隔てた知多半島からはギフTY32局にお声がけを頂く。知多半島方面は御池岳のピークの陰になるが、52で問題なく入感してきていた。

山頂は、結局撤収するまで、ガスが晴れることはなかったが、下山してくると、日が長くなったことを告げるかのように、まだ陽光が降り注いでいた。岐阜県旧上石津町を関が原方面に車を走らせていると、萌えたつ新緑がまぶしい。一年で一番さわやかな、ゴールデンウイークが間近であることを感じさせた。

<追記>
この日の運用では、後からナガノNP152局より長野県伊那市高鳥谷山(たかずやさん)中腹にて、RS41のCBLレポートを頂いた。(TNX ナガノNP152局。)

                                                            ('08/4)


運用データ
運用場所:
  鈴北岳山頂(標高1,182m)
  三重県いなべ市、滋賀県多賀町、
  滋賀県東近江市境 http://map.livedoor.com/map/scroll?MAP=E136.24.41.6N35.11.1.6&ZM=6
時間:
  2008年4月20日(日)9:20~14:55
使用リグ:
  ICB-790T (メイン)
  ICB-880T (サブ)
  PR-900 (パーソナル機)
  DJ-R20D (特小機)
バッテリー:
  6.6Ah×1、2.1Ah×1


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