ロケ選定
SVはどこにしようか、と開始当日(25日)の3日前になってもまだ悩んでいた。今回は東京からのアクセスとなるので、なんとなく南アルプスでも、と以前から考えてはいたのだが、週末の天気予報もパッとしないのでなかなか行き先が決まらない。長野の高山移動のスペシャリスト、ナガノNP152局に情報をいただくと、この週末、南アルプス仙丈ヶ岳も山小屋が一杯で、予約もNGだったといわれている。う~ん、と悩めども他に良さげな移動場所はない。翌日、ダメもとで当局も仙丈小屋に電話をしてみると、キャンセルがでたのか、なんとか予約を受け付けてくれるという。週末の天気は、時間が近づくにつれどちらかというと曇天→雨天に変わりつつあり、キャンセルもかなり出始めているようだった。NP152局とも連絡を取りながら、SVは仙丈ヶ岳(3,033m)で合同運用させていただくことにする。
NP152局は、ホームグランドの長野県伊那市側から、当局は山梨県南アルプス市(旧芦安村)側から、起点となる北沢峠に入山、仙丈ヶ岳9合目付近にある仙丈小屋で落ち合うことにする。
25日(土)、登山途中は、予報通り?霧雨&雨。特に山小屋手前で強雨に見舞われる。13時過ぎ山小屋に到着し、先に入られていたNP152局と、開口一番「だめですね、こりゃ~」と挨拶を交わす。もちろん天候のことである。すでにその時間、運用局もあるかと思われたが、外に出ても仕方がないので、さっそく2人でミニ酒宴が始まる(笑)。NP152局はさすがに、つまみまでかなり用意されており、そこまで気が回らなかった当局は恥ずかしい。一番搾り6缶ほどを空けながらつまみをいただく。(TNX!NP152局)時々外をうかがいながら、談笑も弾む。
雨が上がったと思しき15時半頃から、NP152局とともに少し外に出て、CBをワッチしてみる。それでも霧はかなり濃く、体ではそれほど感じないのだが、アンテナやリグがすぐにずぶ濡れになる。(「水滴が付く」といったレベルではない。)山小屋は稜線の下にあるので、ロケは良くはないが、それでもサイタマUK691/渋峠移動、小淵沢に到着したギフAA365局、富士5合目で運用中のしずおかDD23局等が強力に入感してくる。いずれも57~59+である。NP152局はパーソナルを試されてみるが、運用局はないようだ。(写真:ナガノNP152局提供)
翌日の天気を心配してみるが、夜になっても絶望モード(笑)。小屋の屋根をたたく風雨が時に強く、小屋の中に響いていた・・・(といっても当局は消灯とともにすぐに寝入ってしまったが)
登山途中 |
シナノキンバイ?登山道の脇にこっそりと残る |
雪渓雨と相まって、轟音をたてて水が流れる。 |
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山小屋から山頂までは30分ほど。NP152局は、「朝の小手調べにちょうどいいですね~。」と快調に登っていくが、NP152局ほどに強靭な体力を持ち合わせていない当局はやや遅れながら後をついて行く。途中白い花々が、霧の中に浮かび上がる。
NP152局によると、ハイシーズンの混んだ時は山頂まで上がるのに途中で待たされるようで、待たされる間にこれまで運用されたことのある、いくつかのQRVポイントを説明されている。
どこまで持ちこたえられるのか?
山頂は予想通り、更に濃い霧(雨)の状態。一応記念写真を済ませるが、カメラにもあっという間に水滴が付着する。まだ暴風雨でないだけましだろうか?NP152局は、3エリアとのコンタクトを確認する為、さっそく南側の尾根伝いに移動されていった。
当局は、強風と霧雨の中、山頂の岩場でICB-707を防雨パックに挿入、オンエアを開始する。アンテナにもカバーを施すが、そのカバーが逆に強風下、裸のアンテナ以上に風を受け、アンテナに負荷をもたらす。しかし余り考え込んでいる余裕はない。Ch内をざっと聞いてみると、チャンネルの半数ぐらいが空いているようだ。SVのいつものこの時間、しかも3,000m以上の標高であるならば、普段なら目いっぱいチャンネルは埋まっているはずなのだが・・・。山域以外でも天気が悪いのだろうか。チャンネルチェックをかけても、本当に使われていないようだ。しかしCQを出すとさすがにすぐに応答がある。同じ南アルプス、お隣の北岳山頂(3,192m)にはサイタマKM117局が移動されており、さっそくコールを頂く。信号はもちろん59+での強力入感だが、なにやら息を切らせたかのようにバックがざわめいている。あえて聞くまでもなく、いや、こちら以上に極悪のコンディションのようだ。さすがにもうしばらく運用して撤収されるという。当局側でも、このコンディションでは、あと何分運用できるかわからない。気がつくと、手袋も山小屋に置いたリュックに忘れてきている。
三重県御在所岳移動のミエAC130局や、岐阜県池田山移動のナガオカHR420局とつながるが、あちら(2エリア)側では天候は悪くもないようだ。一方、いつもSVでは木曾御嶽に登られるアイチJH316局は、悪天で登山を見送られて中腹から運用されているようである。どうも各地の天候の様子がつかめない。というより、QSOするのに精一杯であまり余計なことを考えている余裕は全くない。コンディションの仔細を聞いている余裕はなく、各局ともショートQSOを行うのがやっとである。佐渡島の大佐度スカイライン移動のニイガタYS112局にもコールを頂くが、あちらもどうやらかなりの悪天候のようである。1エリアの平地移動局は、それでも運用に余裕があるようにも感じられる。そういえば、山頂に来る前、山小屋前からのQSOで、小淵沢のしずおかT100局や、甲斐駒ヶ岳(2,967m)に登山途中のサイタマMS118局は日が差しているといわれていたような・・・。甲斐駒もすぐお隣だが、下界は晴れているのだろうか?
しばらくすると、南側の尾根に出られていた、ナガノNP152局が戻ってこられた。そこは、六甲向けのポイントで、NP152局が、これまでにも兵庫県六甲山と交信実績を重ねられている場所だ。残念ながら六甲とは今日はつながらなかったようだが、1Wのパーソナルハンディ機(REX-90)で、千葉県の館山移動局と交信されたようだ。ただ、このコンディションの中、かなり寒さを感じてられるようだった。(この日は関西、特に西部は大雨で移動局が少なかったことが後でわかる。)
当局だけCBをやっていて大変申し訳ないので、NP152局に交代していただこうとするが、悪天なので、運用を続けるがどうか迷われているようである。もうひとつ分、防雨パック仕様を持参していたので、使っていただくことも可能なのだが・・・。気温は7度。風速1m/s増で体感温度は1℃下がると、一般的に言われているので、体感は氷点下なのだろうか?最終的に、NP152局は撤収を決意される。薄情な当局はもう少しだけ居座らせていただくことにし、NP152局と、お礼の意をこめて山頂で固い握手をして別れる・・・(NP152局、どうか御容赦を・・・)
風ニモメゲズ・・・ |
すべて、余裕なし
山頂はEsが入らない割には、海外QRMが騒々しい。時々空きチャンネルを探してQRVするものの、途中でQSOが困難になるほど混信がうるさくなっていた。新潟県上越市移動のイバラギAA818/0局と久々のQSOに入るも会話がつぶされて、危うく尻切れになるくらいだ。富山県五竜岳には、いしかわAS36/9局が移動されており、コールを頂く。AS36局とも久々のQSOとなるが、3Ch 、4Chと2度もQSYしていただきながらのQSOとなる。久しぶりに少しだけ長くQSO時間を取りたい気もあるが、とにかくそんなことを考えている心理的余裕は全くない状況だった。4局くらいQSOを完了すると、霧雨と風の合間を縫って、ウェイストバッグの、さらにビニール袋の中に入っているログを取り出し、かじかんだ手で速攻で書きなぐる。その間は頭の中にQSOのデータ(時間やRS、運用場所等)を一時メモリーだが、当局のRAMはもとより容量が乏しいので、4局ぐらいが限度である(爆)。雨天のログ筆記用に鉛筆も用意してあるが、ボールペンから交換する余裕もない。水滴であっという間にぐちゃぐちゃになりかける紙の上を、ペンを走らせてはしまい込む。荒天はすべての余裕を失わせる・・・そう、アンテナの防水袋も、風の影響を受けにくい、もっと密着型のピチピチ袋を用意していたが、今更、一度つけたものを交換している余裕など到底なかった。ログ記入は風が弱まる時をねらうものの、手がアンテナから離れるこの時がもっとも危険で、リグ損傷のリスクが最も高まる。
悪天にもかかわらず、朝8時を過ぎる頃には、山頂はかなりの人が押しかけては去っていった。常に5人から10人が絶え間なく岩場を一時的に占拠している。
8:15過ぎ、それまでなんとか運用を続けていたが、707のアンテナの中ほどをつかんでいても、アンテナが曲がるくらいの強風に常に晒されるようになる。中ほどを左手でつかんでいても、アンテナの根元と先端部にはかなりの力が加わっているようだ。アンテナを握り締めながら、一瞬わけもなく振り返って風が来る南西?の方を顧みるものの、風が納まる気配など感じられようはずもなかった。時間は8:20分。少し悩んだが、ここで潔く撤収を決意する。
となりのトトロが・・・
手早くアンテナをしまいこみ、屈みながら、リグをクッション袋とビニール袋に詰めて更にアオキスーパー(笑)のレジ袋にしまいこんでいると、「となりのトトロ」を奏でる笛の音が聞こえてくる。危うく口ずさむ所だ(笑)。一瞬幻聴かと思ったが、頭をあげると、山頂の標の脇の、すぐ後ろの岩場で、なんと高校生くらいの女の子がオカリナを吹いているではないか。う~ん、やられたか。当局などよりはるかに根性が座っているようである。・・・なぜ、こんな天気、こんな場所で?・・・頭をかけめぐる。しかし、この霧雨と強風の中で、メロディを奏でる姿は余裕すら感じられる。百名山の山頂すべてで「となりのトトロ」を吹くことが、まるで目標ででもあるかのように・・・。
山頂から撤収し、標高にして50mくらい下ってくると、ピタリとかぜの影響を受けない場所に出くわす。ここで、運用を続けるべきか否か、再び5分くらい立ったまま悩むが、下山を選択する。仙丈小屋でリュックをピックアップし、北沢峠へむけて下山を開始する。
バスの時間までは余裕綽々なので、途中2,500m付近の「大滝の頭五合目」から休息がてらQRVしてみる。空は標高を下げるにつれ、明るくなり、もう青空すら見えている。木々の間からは甲斐駒の山頂付近も目に入る。朝から八ヶ岳方面にある、編笠山(2,524m)に登山を開始されていたギフAA365局はすでに山頂から運用されており59でつながる。今日二回目のQSOとなるシズオカAD964局(富士山五合目)も、59での強力入感で、かなり「暑い」と言われている。こちらの「五合目」でも仙丈ケ岳山頂とは、まるで違った天気にやや拍子抜けしながら、北沢峠への道を続ける。撤収の判断は結果的に誤りだったかも知れないが、まあ、山とは、こんなものだろう(笑)。
いずれの日か、今度は壮大な景色を眺めながら仙丈ヶ岳山頂からの運用を楽しんでみたい・・・。
(’09/8)
[Special TNX!ナガノNP152局:合同運用ならびに、貴重な写真を提供頂き、深く感謝いたします。]
運用データ |
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運用日: 2009年7月25日(土)、26日(日) 運用場所・時間: 長野県伊那市仙丈ヶ岳山頂(3,033m) 26日:6:35頃~8:20 仙丈小屋前 25日15:30頃~16:15頃 26日5:40頃~5:50頃 使用リグ: ICB-87R、ICB-707 |
サイタマUK691局(群馬・長野県境 渋峠) | 57/55 | ギフAA365/1局(山梨県北杜市) | 59+/57 |
しずおかT100/1局(山梨県北杜市) | 59/57 | しずおかDD23/1局(山梨側冨士5合目) | 57/55 |
しずおかT100/1局(山梨県北杜市) | 59/ | サイタマMS118局(山梨県北杜市駒ケ岳中腹) | 57/59 |
しずおかAD964/1局(山梨側冨士5合目) | 53/53 |
サイタマKM117局(山梨県南アルプス市北岳) | 59/59 | ミエAC130局(三重県御在所岳) | 51/51 |
アイチJH316/0局(長野県木曽御嶽中腹) | 51/51 | ニイガタYS112局(新潟県佐渡島) | 53/53 |
シズオカYM181局(静岡県沼津市) | 51/52 | ナガオカHR420局(岐阜県池田町池田山) | 51/51 |
カワサキTR375局(山梨県山梨市前国師岳) | 56/56 | ミエAC129局(三重県御在所岳) | 52/52 |
サイタマAD421局(長野県美ヶ原) | 52/53 | おおさと59局(長野県美ヶ原) | 52/52 |
オオイタRS4410局(長野県美ヶ原) | 52/52 | チバHI429局(千葉県館山市) | 51/52 |
イバラギAA818/0局(新潟県上越市) | 51/51 | ニイガタYM016局(長野県富士見町入笠山) | 57/58 |
いしかわAS36局(富山県黒部市五竜岳) | 51/52 | ギフTY32局(愛知県豊根村茶臼山) | 52/53 |
チバTM42局(千葉県館山市) | 51/51 | ナガノJA01局(長野県中川町陣馬形山) | 53/52 |
ナガノAA601局(長野県岡谷市王城) | 55/53 | ギフAA365/1局(山梨県北杜市編笠山) | 59/55 |
しずおかAD964/1局(山梨側冨士5合目) | 59/56 | ヨコハマFUR98/0局(長野県上田市武石峠) | 51/51 |
'09/07/25~26 |