夏は来ぬ

堀坂山(三重県松阪市、標高757m)での運用を計画して、かれこれ2年以上になるだろうか。
別に大そうな移動でも何でもないのだが、いつも計画倒れでなかなか実現に結びつかない。今回、8月8日の土曜日に時間が取れるチャンスが巡ってきたので、思い切って(笑)「気軽に」運用に出てみることにする。2エリア、愛知・三重地区は、土曜日は運用局が少ないことは敢えて知っての上だが。
堀坂山は、散歩の延長でお手軽に登れる山なので、松阪市民の憩いの場であるらしい。登山口の堀坂峠を少し下ったところには、森林公園もある。カーナビでは、名古屋市内の自宅から111Km。しかし、いざ出発してみると高速のETC割引渋滞で予想外の到着時刻となる。

今年の夏は、まだ夏らしい表情がなく、空も夏空らしくない日が続いていたが、今日だけは、朝からそれらしい空色だった。ほぼ全面的に開けた山頂からは、南の局ヶ岳から奈良の山々まで途切れなく一望できるが、やや霞んだ山々の上には、入道雲のように白い雲の山々が夏の光を受けていた。伊勢湾の海岸線もおぼろげながら、見えているようだ。
ようやく夏がやってきたのだろうか。

ICB-790Tをセットし、とりあえずワッチを開始してみる。時間はちょうど11時、昨夜の「2エリアCBerの情報掲示板」で予告したとおりの運用開始時間になんとか間に合った。8Chは何かデータを送るようなノイズでS3くらい振っている。7Chもその影響で使えそうにない。しかし他のチャンネルは、耳を澄ましても、運用局どころか、ノイズすら聞こえてこない。異様に静かだ。
2~3分ワッチしても何も聞こえないので、CQを出してみる。もちろん応答局はない。まだ夏らしくなる前に暦は8月になってしまったが、Esが終わるのにもまだ早すぎる。何か聞こえても良さそうなものだが、まるで真冬のCB運用を思わせる静けさだった。

のんびり座って、今日だけ夏らしくなった空を眺めていると、雲の様子が刻々と変化する。雲間から覗く空の青さも時に藍色のように濃く、時に水彩のような水色を彩る。伊勢湾に向かってひろがる黄緑色の大地には、小さいモザイクの街並みが、ところどころに点在していた。




富士山2合目&御前崎

山頂の案内板の下にぶら下がった温度計を見てみると26.5度くらいか。日差しは強いものの、涼しい風に吹かれていると、汗をかくこともなく、心地よい。

やがて3Chにセットしたままの790Tから、ローカル同士のQSOらしき交信が流れ始める。二局とも、聞き覚えのある声だ(笑)。
どうやら、富士山2合目移動のしずおかDD23局と、御前崎移動のシズオカAD964局の会話らしい。DD23局は51ながら明瞭に、AD964局は41で入感してくる。ただ、さっきまであれほど静かだったチャンネル内が、ここにきて海外からの混信とノイズでにわかにざわめき始めていた。AD964局はどうやら、ミエAA469局と合同運用で、一緒に御前崎におられるらしい。無事QSOを終えるが、それにしても、富士の2合目といい、海抜0mに近い御前崎といい、よくつながるものだと他人事のように感心する。特に御前崎は、完全に水平線の下の、見通し外のはずだ。

そよ風に吹かれながらワッチを続けるが、さすがに土曜日とあって、運用局も少ない。CQを出しても空振りが続く。バンド内は時々海外局の交信が入ってくる程度で、また静かな状態に戻っていた。海外局は、この時期らしく、入感してくるのは、韓国語の局だった。
神仏を祭った祠の隣には、式典か何かに使うための道具を納める背の低い避難所のような建物があり、その屋根に790Tを置いてワッチを続ける。CQを10分おきくらいに出しては、リグを抱えて祠の前のイスに戻って、ボーっとする。こんなことを繰り返している内、屋根から降ろしたリグから、当局を呼ぶコールが聞こえる。ミエAC・・・・。向こうから41と言われている。屋根にリグを戻して交信を続けると53に跳ね上がる。四日市の固定の庭先からミエAC129局が呼んでくれていた。偶然アマ機で受信中に当局のCQをキャッチされ(笑)、あわててCB機を持ち出してコールしていただいたようだ。ミエZ3899局も一緒におられ、AC129局との交信後にQSO頂く。

それでもパーソナルは立ち上がる

松阪方面に見えている伊勢湾は、午後に入ると時間と共に徐々に輪郭がハッキリしてきた。その北方面には、津市から更に広がる伊勢湾の海外線も識別できる。その上に浮かぶ雲も、刻々と姿を変えていた。飽きることなく景色を眺めながら山頂をウロウロしていると、後ろでPR-6の27144が唐突に立ち上がる。社の石段に半ば放置状態だったのだが、片隅に置かれたこの短いアンテナでよく立ち上がるものだ、と感心しつつ応答すると、伊勢湾を縦に突っ切った愛知県西尾市からアイチHZ76局がモービル移動されていた。やはり愛知、岐阜、三重県エリアはパーソナルが欠かせない(笑)。CBはダメでも意外とパーソナルはつながる。


伊勢湾方向

松阪港
午前中は海も朧。
松阪市中心部
緑の大地と市街が。
海岸線も見える。
刻々と変化する。
時間の経過とともに、逆に
海の輪郭は、はっきりして
いく。


14時を過ぎて、撤収の頃合を見図りながら、CBでCQを続ける。大きな海外局の入感はないものの、全体的にノイズレベルが上昇してきている。するとノイズと一緒に、S1くらいで、当局を呼ぶコールが聞こえたような…?QRZ?と返すと、今度はノイズの中からはっきりとトウキョウCT73/9局が浮かび上がってくる。RS51/51。立山剣岳からと言われている。北アルプスの立山連峰に登られているようだ。ノイズレベルが上がってきていたので、ショートQSOで失礼するが、剣岳からCBを運用されるとは圧巻だ。三重県の名も知れぬこの堀坂山で運用中に、偶然北アルプスの剣岳とグランドウェーブでつながるという意外性に、CB運用の面白さを改めて教えられる。

撤収の準備に取り掛かろうとすると、放置中のPR-6から、再び27144が立ち上がる。愛知県国府宮のアイチJH316局のCQで、岐阜市に程近い、岐南町のギフTY290局とQSOに入ったところをブレークインする。松阪市のこの山頂まで、両局ともバリバリに入ってくるが、こちらからもかなり強く飛んでいるようで、山の上はやはり1Wのハンディ機で十分だな、と再認識させられる。

本当の夏はいったいいつやってくるのか。しかし、今日一日だけは、やっとその姿を垣間見ることができた。
                               ('09/8)


                                              
運用データ
運用日:
  2009年8月8日(土)

運用場所:
  三重県松阪市堀坂山(標高757m) 
   11:00~14:45
  
使用リグ:
  ICB-790T
  PR-6

  

QSO局
シズオカAD964局/静岡県御前崎 41/41 しずおかDD23局/静岡県富士山2合目 51/51
ミエAA469局/静岡県御前崎 41/41 ミエAC129局/三重県四日市市 54/53
ミエZ3899局/三重県四日市市 53/52 アイチHZ76局/愛知県西尾市M M5/M5*
とうきょうCT73/9局/富山県剣岳 51/51 アイチJH316局/愛知県国府宮 M5/M5*
ギフTY290局/岐阜県岐南町 M5/M5*
*:パーソナル


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御岳山
 '09/08/08