GW一斉オンエアデイ (2008/05/04)
八剣山頂上より弥山方向:
運用前、中央に弥山小屋、背後には山上ヶ岳と大普賢岳が見えていた。




近畿最高峰

奈良県の南半分は山が深い。ガイドブックなどでは、登山やハイキングという意味での奈良県の山岳地域といえば、東部三重県との県境、日出ヶ岳(1,695m)を中心とする台高山系と、中央部の大天井ヶ岳から玉置山へと連なる大峰山系が大括りにされているようだが、その大峰山系の主峰八剣山(1,915m、別称八経ヶ岳、仏経ヶ岳)が、近畿地方の最高峰であることは、意外と知られていない。もっとも、1900mというのは、日本のどこにでもある高さなので、無理もないかも知れない。
ゴールデンウイーク(GW)の一斉オンエアデイ(OAD)は、この八剣山に移動することにする。


荷物は減ったか?
八剣山の隣には、弥山(みせん、1,895m)という山があり、そこでの運用は3年前に計画したことがある。ただ、これまでは、アマ機による受信が絶対であるという思いから、特にイベント時はセパレート運用にこだわっていたこともあり、荷物の関係上、つい歩行時間が短い大台ケ原での運用になってしまっていた。QRPの世界では基本的に受けが勝負。アマチュアのQRPPの世界では、出力5mWでWACを達成している局もあるくらいだから、 (受け側の)耳のよさがいかに重要であるかがわかる。アマチュアのQRPPに比べれば、CBの500mWは、出力だけとってみれば、相当の大出力である。しかし、CB機はアマチュア局のように外部アンテナは使えない。したがって移動運用で、耳の良さをどのように向上させるかが重要なテーマだった。(CB機はトランシーブ操作が基本!、という御意見もあろうが。)
また、CBのセパ運用では、ついでにアマバンドを運用してもそれなりに楽しみはある。グランドウェーブではない、通常の電離層反射伝播でのHF運用で高いところに登ってどういう意味があるのか、と思われるかもしれないが、ノイズの少ない山の上というのは市街地の平地より相当に受けがいい。大台でもノイズを拾いやすい無指向性アンテナで、北米のフォーンがよく入感してきていた。
しかし、HFアマ機でのセパレート運用ということになると、当然バッテリーやアンテナ、それを支えるものも持参せねばならない。それらを一人で抱えて3時間も4時間も歩くわけにはいかなかった。

昨年(’07年)5月のOADまで、1年以上セパ運用を続けた当局の実感としては、山の上でのセパ運用はそれなりの効果はあるが、やはり3エレくらいの指向性アンテナを使わない限り(使ったことはないが)絶大なる効果を発揮するとは言いがたいように思われる。理由の一つは、CB機の受信能力は馬鹿にならないということである。確かに、CB機でS1~2程度が、アマ機ではS8~9を振り、AMラジオのように聞こえてきたりするが、だからといって、CB機で受からない電波が受かるかといえば、そうでもない。(もともと同じSメーターで比較しているわけではないのでさして意味はない。)逆に言うと、CB機の受信性能というのは、アンテナがロッドアンテナ(=利得マイナス ウンdB)であることを考慮すると、まんざら捨てたものではない、というのが当局の実感だ。セパ運用時は、山頂に釣り竿と三脚を持ち込んで、1/2λのアンテナ(5.4m)を受信用に使っていたので、絶対利得は、一応理論的には2dBちょっとである。もちろん指向性はないが、ロッドアンテナとは大きく異なる。受信用とはいえ、自作のマッチングセクションでインピーダンスも27MHzに整合させていた。
二つ目の理由として、仮にいくらこちらの耳を良くできたとしても、QSOする相手の耳もよくなければ、セパ運用はあまり意味がないということである。したがって「絶大なる効果」にはならないのである。


 セパ運用(2006年)


'06/GW一斉OAD(大台ケ原 三津河落山): 

'06/10移動運用(大台ケ原 三津河落山):
2年前の790Tとのセパ運用。
790TでS3がアマ機ではS9を振ってくる。

RJ-580とのセパ運用。アマはWがよく入感していた。


メタボな超スロー
午前5時ちょうど、日の出とともに登山口をスタート、セパ運用はしないので荷物の総重量は11Kgに収まっているが、メタボな体は超スローなペースでしか登ることができない。弥山を過ぎて、八剣山山頂に着いたときは既に8:30を回っていた。

山頂はどちらかというと狭く、人気の有る山とあって次々に登山者が登ってきて朝から大賑わいである。中央にある、念仏の?札がたくさん置かれた岩場は登山者のイス代わりになって、なかなかQRVに適した格好のスペースが空かない。20分以上ウロウロ写真を撮ったり、朝の握り飯を食べたり、景色をながめたりしてすごしながら、漸くスペースを確保し、ICB-790Tをセッティングした。
スイッチを入れると人里離れていることから、イヤフォーンからは人工的なノイズはほとんど全く聞えてこなかった。1,915mと、標高は高くはないが、紀伊半島では一番高い場所となるため、各地からの電波の入感状況は優れていた。

9:00ちょうどにオンエアを開始。程なく、ポータブル4の広島県庄原市道後山移動のひろしまDM11局よりコールをいただく。続けて同じくポータブル4、鳥取県大山移動のシマネMS228 局とつながった。OADだけあって、各局、既に9時過ぎには、運用の佳境に入っていたようだった。やはり当局は出遅れたか?どちらの局も250~260Km離れていると思われたが、RSは52で信号は何の問題もなくキレイに入感してくる。


特小でブレークイン?
山頂より1、2、3、4、5エリアへ。(オンエア前撮影)

登山スタート時から運用開始までは空は晴れ渡っていたが、運用を始めて10分もすると、山頂は白いガスの中に包まれてしまった。リグ越しによく見えていた大台方面の山々も、視界が閉ざされて全く見えなくなってしまう。山頂の下からは絶え間なく冷たいガスが吹き上げてくる。案の定、790Tのロッドアンテナには水滴が付着し始めていた。

時々、大きな水滴が空から降ってくる。午後まで天候が持つのか不安になりながらワッチしていると、きょうとKP127局のCQが聞こえてくる。KP127局とは、イベントデーではいつも運用終了間際につながることが多いが、今日は珍しく、早い時間につながり一安心する。さて、今日の運用ポイントはどこだろうか?...兵庫県アサゴ市アワガ山962mと言われている。兵庫の奥のほうだろうか、962mというと、おそらくそのあたりの山ではかなり高い山に思われた。相変わらずFBそうな場所から出てこられる。距離はどれほどかわからないが、Sも5を回ったところで入感してくる。メインリグとは別に、ICB-660Tも持参とのことで、リグの比較実験を実施。特小も持参されているということで、L04 Chで交信を試してみることにする。ザックからR20Dを取り出し、本能的に山頂の西よりに移動、KP127局のコールを待つと、特小特有のFM音がM5で入感してくる。どうやら見通しらしい。

特小でKP127局との短めのQSOを終了しようとする間際、当局のコールサインを呼ぶ局が聞こえてくる。んん?特小でブレーク? アイチJH316局だった。
316局といえば今日は伊豆方面移動と、確かどこかの掲示板で見たような...。簡単にブレークインしてこられるところを見ると、移動地変更で近場移動か?、と思いきや、移動地は静岡県加茂郡長九郎山と言われている。「長九郎山」というのは聞くのが初めてだが、「加茂郡」は伊豆半島のどこら辺かは把握している。奈良県の真ん中から伊豆半島とこんなに簡単に交信できるとは。しかも当局のポジションは山頂の西よりで、伊豆方面にはコンディションがよくない。紀伊半島から伊豆への特小は、以前の大台ケ原の経験から、位置取りがかなりシビアーなはずだったのだが。
JH316局とは、後刻CBでも全く問題なくつながる。しかし、伊豆方面は大荒れの天気のようで、悪天候を避けるためゲリラ的に展望台?に出撃して運用されているようだった。


790T
山頂の東側崖っぷちに陣取る。下から冷たいガスが絶え間なく吹き上げていた。時どきアンテナの水滴を指で弾いてみる。
ガスの切れ間に
一瞬弥山小屋が見えた。


87Hは次回に
八剣山はロケが良いせいか、2、3、4、5エリア方向から、時には一つのチャンネルに3~4局が重なって聞こえてくる。4Chを聞いてみると、1エリア神奈川県箱根駒ケ岳移動のヒョウゴAC315/1局が聞こえてくる。しばらく聞いていると、1エリア各局から呼ばれて中々忙しそうだ。声をかけてはいけないような雰囲気である(笑)。315局の事前の下調べでは、箱根駒ケ岳と八剣山では、300Kmオーバーの距離らしいが、こちらにはRS52でローカル局のように信号が届いていた。しかし、駒ヶ岳の方では、若干火山性?のノイズが気になっているらしかった。QSOに移って、AC315局が持参すると言われていた、ヘリカル機のICB-87Hの実験をしてみましょうか?という話をしてみるが、ノイズが収まってから後でもう一度ということで、一旦QSOを終了。その後ずっと昼まで聞こえていたAC315局だったが、昼を過ぎるとぱったり聞こえなくなる。結局87Hの実験はお預けとなった。(後から聞くと、悪天候のため12時で下山されたとのこと。)

ガスに包まれた山頂でCQを出していると、岡山県に近い兵庫県佐用郡よりカナガワOT207/3局よりコールを頂く。「カナガワOT207」局といえば、コールサインは記憶に新しい。それもそのはず、つい先日4月29日(祝)に当局が東京都青梅市の高水山からプチ運用した際、1st QSOして頂いた局で、更にそのときの運用記はQSOリストも含めて前日(5/3日)に仕上げていた。(笑 29日のQSOでは、朝Esが出ていたので、あわてて移動された、というような話や、国道1号線の原宿交差点付近のQRVポイントの話をしていた。ちなみにそのときの話は運用記にはない。(笑 1エリアでつながって、まさか5日後に3エリアでつながるとは…。人の移動の激しいゴールデンウイーク中であるので、こういうのもありである。
3エリア側は、11時過ぎくらいから平地移動局も含めて、本格的にかなりの局が聞こえてきていた。奈良・大阪・京都方面は最終的に、オオサカKA06局や、ならAN78局をはじめ、1stQSOになる局だけで5局とつながる。


5エリア
5エリア各局も、11時頃までにはFBに入感してきていた。愛媛県石鎚山ではえひめBV58局が運用されており、コールを頂く。石鎚山に移動される局があるとは予期していなかったので、グランドウェーブでBV58 局とQSOできたことは嬉しかった。山を登ってきた甲斐もある。箱根駒ケ岳とはつながることは予測していたが、奈良県天川村から愛媛県の石鎚山までよくつながるものだ。

4Chは大変込み合っていたが、徳島県からは、かがわHC18局/竜王山と、大川原高原移動のとくしまYF99局とのQSOが聞こえてくる。かがわHC18局とは昨年(’07)11月以来の2ndQSO成るが、YF99局とはQSOタイミングを失してしまう。それぞれ、53、52での入感である。YF99局とは4月20日に同じく大川原高原から、当局側、三重/滋賀の県境の鈴北岳にてQSOしていただいている。東近江に近い鈴北岳(大川原高原まで228Km)でもRS52だったので、鈴北岳は徳島方面には条件が良いということか?(笑


午後からはノイズが
山頂では、リグの脇に置いた温度計(腕時計)が、QRVしてから12度台から13度台を行ったりきたりしている。風が冷たいので、ダウンを羽織って運用を続けていた。
2エリア方面からは、アイチAE114 局がRS52ながら、大変力強い変調音で聞こえてくる。今日は岐阜県郡上市の高賀山移動のようだ。伊勢湾、三河湾の向こう側、なごやFT201局三河湾スカイライン移動は55でさらに強力だった。両局とも高所移動のせいか入感はFBだったが、2エリアとしては、いつものイベントデーより聞こえてくる移動局が少ないように思われた。八剣山から名古屋までは直線で140Kmほどの距離になる。2エリア側の平地は奈良や三重の山脈越しになり山陰になるエリアが増えてくるせいだろうか?それでも、山陰と思われる四日市方面のなごやCE79局とアイチDI209局のラグチューが入感してくる。こちらから何度かブレークを試みてみるが、届いていないようだった。FT201局とのQSO中にアイチAE126局池田山がブレークインされてきたが、RS31でぎりぎりの入感だった。

午後1時をすぎると、徐々に自然性のノイズと海外局の混信が高まってきた。13時から伊勢湾ロールコールの特別版を実施していたイワテB73 /2局青山高原移動も、いつになくチャンネル選択やチェックイン局のピックアップに苦労されているようだった。14時近くになると、海外QRMとノイズもいっそう強まり、当局もチャンネルを移動しながらのQSOとなる。ノイズに悩まされながら、伊勢湾越しに常滑市セントレア移動のナゴヤAM233局からコールを頂き、なんとかQSOを完了する。


5月の空
14時を回った頃から、バンド内も静かになり、ようやくあたりを見回す余裕も出てきたが、相変わらず霧に包まれたままだった。この時間になると山頂まで上がってくる登山者もかなりまばらになる。辺りはいっこうに晴れる気配がなかったが、運用を終了しリグを撤収して女性登山客2人と話し込んでいると、にわかに晴れ上がって、弥山小屋の右方に、山上ヶ岳や大普賢岳が姿を現した。


それも長くは続かなかったが、垣間見えた明るい陽が射す空は、確かに5月の顔をしていた。

                                                            ('08/5)


運用データ
運用場所:
  八剣山山頂(標高1,914.9m)
  奈良県天川村(上北山村境)
http://map.livedoor.com/map/scroll?MAP=E135.54.42.9N34.10.29.7&ZM=5
時間:
  2008年5月4日(日)9:00~14:30
使用リグ:
  ICB-790T (メイン)
  ICB-87R (予備機)
  PR-6 (パーソナル機)
  DJ-R20D (特小機)
バッテリー:
  3.2Ah×1、PR-6用バッテリー×2

*写真:右上にお札?


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