2011運用記
早池峰山 
    '11/11 岩手県花巻市・遠野市・宮古市


[山頂より北を望む:すっかり色づいた山々]


風に閉口

昨年の秋オンでは青森県の白神岳からQRV、今年の秋オンも当初は東北方面からQRVするつもりでいたのだが、予定を変更、なぜか?新潟の火打山から出ることになった。このままいくと、今年は東北での運用がなくなってしまうので、11月3日のOADは、東北からQRVしようと、心に誓う(笑。山はもう雪の季節である。東北でQRVできるラストチャンスである。ということで岩手県の早池峰山(1,917m、百名山)からの運用に狙いを定めてみる。

運用は3日の半日程度だが、アクセスの時間が必要である。OAD前日の2日は有休を取ることにし、のんびり朝寝坊(笑、それからいそいそと旅支度を始めて午後の「やまびこ」で新花巻へと向かう。花巻にはいわて花巻空港があり、早池峰山には50km圏内でアクセスが良いのだが、なにせ羽田便がない。飛んでいるのは大阪や札幌のみである。「秋田に飛んで車で移動」という選択肢にも十分悩むが(秋田空港は、フライト時刻といい、便数といい東京からは非常に使い勝手がよい)、いろいろ計算してみると山頂にQRVできる時間が1時間ほど短くなる。神出鬼没と、山頂での滞在時間をMaxにすることをモットーとしている?当局としてはやはりここは新幹線しかない。(笑

夜、基点となる河原の坊駐車場に到着する。高山植物で有名なこの山は、7月から8月は車両規制されるほど大勢のハイカーで賑わうようだが、この時期、真っ暗闇の駐車場には人っ子一人いない。不気味な静けさだ。ラジオが告げる天気予報では、明日の天気は曇りのち晴れ。明け方にかけて雨が降るかもしれないとのこと。車で寝ていると、確かに予報通り、夜中は強い雨が車の屋根をたたいていた。

朝6時、出発予定時刻になっても、雨は時にザーザーと音を立てて降ってくる。あわてることもないか、と車で待機、予定時刻よりかなり遅れて出発する。雨粒は止まったものの、周りはガスで視界は全く効かない。そのうち天気予報通り晴れるだろう、とノーテンキに思いながら、登りにかかっていく。しかし、雨こそ上がったものの、日が差してくる気配は全くない。しかも、森林限界を抜けると、左からの風が暴風となって襲い掛かってくる。まるで雪のないブリザード状態だ。早池峰の南面を登っているのだが、背後(南側)にある薬師岳(1,645m)との間が、西からの風の通り道になっているようで、風の吹きつけ方が半端でない。これは難儀だ。ザックを背負っているので、風で体を持ってかれてしまう。ぴったりフィットして隙間など全くないはずのザックのレインカバーが、バタバタと背中で音を立てている。風は止まるときが全くなく、息をするのが困難なほどの風圧である。つらさと言う意味では、どうということはない登りなのだが、風がつらいことこの上ない。40~50分ほどスローな歩みでなんとか我慢(笑、河原の坊から2時間半かかってようやく山頂に到着する。


OAD開始





劇的 before after (笑

気温は4℃。強風で運用どころではないのでは、と心配していたが、山頂はせり立った岩だらけのせいか、風を上手く遮ってくれているようだ。今日は一応冬山装備?で、軽量化のため持って来たリグは87Rと、デジ簡と特小のみである。携帯電話(ドコモ)の方はアンテナが電波をつかまえる時間を待てば、使えるようである。

9時ちょうど、さっそく運用に取り掛かる。考えてみると(当たり前だが)、岩手県で電波を出すのは初めてだ。昨日は掲示板上で、いわてDE69局や、イワテAA707局よりごあいさつを頂いており、繋がるのが楽しみである。山頂北側の岩の上に陣取り、しばらく3ChでCQを出してみるが応答はない。海外が異様にうるさく、F層伝播が絶好調であることを物語っている。5Chでの英語局や、ロシア語お姉さんも大活躍だ。去年までのこの時期なら全く考えられない入感状況である。

CQは諦め、しばし8Chでのワッチに入っていると、チャーリー・フォクストロット局のCQが聞こえてくる。耳を澄ますと、みやぎCF06局のようだ。一関市の束稲山(たばしねやま)から出ておられるようである。一応、移動する前に各局のブログ等で、よく運用に使われるロケ等は下調べをしてきたので、束稲山も来る前に地図で位置を確認している。標高600m程度の山のはずだ。岩手県は南北に長く、早池峰山はその中間ぐらいである。一関市は南端で宮城との県境に位置する。87Rを手に、山頂の南側断崖に移動すると、CF06局の信号強度も上がってくる。RS52/53。ただ、海外のかぶりとノイズがときに激しくCF06局の信号に覆いかぶさる。CF06局は、みやぎME06局と合同運用されており、ME06局とも52/52でつながる。

DCR(デジ簡)の方は、ノー感なのだが、しばらくのんびりCQを出しながら空を眺めていると、ようやく東南方向の空のガスが太陽で白く輝き始めてきた。雲が薄くなってきた証拠だ。その後CBで繋がった、いわてDE69 局との交信中に、とうとう雲が切れ始め、青空が広がり始めた。山頂は一気に明るくなる。天気予報通りである。

Before & After: 左:登頂直後、中央:晴れ上がり後。
右:正面に見える薬師岳



掲示板で挨拶を頂いていた、いわてDE69局は室根山(一関市)から出られており、信号は57と強力である。当局の信号も59とのことで、約束通りつながってほっとする。今年になって再開局された件や、某局の東北移動運用、当局の沖縄運用等、いろいろ話も弾み(笑、ついついQSOもロングになってしまう。DE69局以外にも、最近は再開局組みが多いといった話などを伺っていると、岩手CBer各局によるCBの盛り上がりを実感する。

相変わらずキュルキュル音が激しいが、更にメインの3Chで待機していると、いわてAN26局のCQが盛岡市内から飛んでくる。CMの合間に、迎撃に出てきてくださったようである。その思いに感謝は絶えない(TNX! AN26局)。AN26局とは去年の秋オン、そして今年のゴールデンウイークOADでのEs交信以来だろうか。仕事の合間のようなので、ロングにはQSOできないが、グランドウェーブでつながるのはやはり感無量だ。


颯爽と現る

バンド内をワッチしていると、県内ではどうも8Chがメインで使われている?ようなので、8Chも集中的にワッチしていると、イワテCN???局(おそらくCN100局)のCQが、ノイズの合間からか細く入感してくる。呼んでもダメなようだ。見失わぬよう87Rと格闘していると、青緑色のウェアーにサングラスの、しゃれたいでたちの粋な登山者が颯爽と現れ、「こんにちは」と元気よく声を掛けてくる。山で挨拶を交わすのはごく当たり前のことなのだが、一瞬面食らいつつ(笑、よく見るとザックの脇からニョキっとフレキシブルのアンテナが見え隠れしている。当局も無線機を抱えているので、お~、アマチュア無線家かと納得していると、「イワテAA169です」と自己紹介される。なんとCBerであった(爆。

CBer密度の高い東京近辺の山でもめったに偶然CBerに出会うことはないのだが、まさか早池峰山でばったり遭遇するとは思ってもみなかった(笑。しかし後からいろいろお聞きすると、AA169局は年に何度も早池峰や、正面に見えている薬師岳に登られているそうで、今日のOADも最初から早池峰を移動予定に組まれていたとのこと。そこに当局がお邪魔してしまった格好だ。当局はリアル板に早池峰での運用予定を書き込んでいたので、「なんだか変なやつがいる」と、きっと思われていたに違いない(爆。それにしてもモンベルのウェアが良く似合うカッコいい登山家CBerだ。
AA169局とは、交互のCQ体制に入り、合間にCB談義に花が咲く。楽しい合同運用となる。169局も最近再開局されたようで、やはり以前は中学生時代にやられていたようである。

空が晴れ上がってからはそこが抜けるような青空が続いている。山頂北側の眼下には、幾重にもなった山並みの紅葉が、青空のコントラストの下、見事に色づいて見える。登ってくる途中あれだけ苦労した風もいつの間にかおさまり、絶好の運用日和となっていた。この時期には珍しく気温も10℃近くまで上がっているようである。





DCRの方は、さっきから折に触れてCQを出してみるものの、やはり応答局はない。全チャンネル確認しても、レジャー局はおろか業務局も全くない(笑。まあ、DCRはもともと坊主を想定していたので予想通りだが、どっこい暇に任せてリグの写真を撮っていると、まさにカメラの真ん前のDPR-5が突然しゃべりだす(笑。呼び出しチャンネルへの入感だ。いわてAD03局の信号である。遠野市の寺沢高原に移動されているようで、山頂の南側に移ると、アンテナ3本で更に強力に入感してくる。(と言っても聴感上は変わりはないが(笑。)DCRは坊主を覚悟していたので、うれしい入感だ。一局でも交信できるのと、ゼロとでは大違いである。

AD03局とはその後、11m、特小と3バンドでのQSOとなる。特に特小では、岩陰のリュックの上で横倒しになっていたDJ-R20Dのスケルチをこじ開けての入感で、とても10mWとは思えない。ハンディアマ機での交信と錯覚するほど強力に入感してくる。距離はどれくらいか分からないが、ロケの相性は抜群のようである。


5年ぶり?グランドウェーブで
12時を過ぎてからは、そろそろ運用終了時間が気になり始めるが、CBではもう一局、つながるのを楽しみにしていたイワテAA707局とまだ交信できていなかった。先に交信を終えていたAA169局からのQSPでは、AA707局は盛岡南から更に紫波の方に移動される途中とのことで、交信できる時間は限定されているようだ。しかし運良く移動直前?に707局の信号をキャッチする。707局によると、最後につながったのは’06年頃ではないか?と言われているが、当局としては掲示板などで、特に夏場はしょっちゅうコールサインを拝見しているので、そんなに永い時間が空いている感覚はなく、つい最近QSOしたかのように一方的に親近感を感じる(笑。確かに5年ぶりなのかもしれないが、当局の場合、沖縄を除けば、グランドウェーブでの運用が主体なので、やはり早池峰まで来てAA707局とつながるというのは、それだけで喜ばしい限りなのである。

CBでは最後にいわてDS94局とつながるが、DS94局も最近の再開局組みのお一人のようで、岩手でのCB運用は今後ますます楽しみになりそうである。

まだ運用中のAA169局とは山頂で別れを告げて、一足先に下山することにする。しかし、林道をとぼとぼ駐車場に向かって歩いていると、追いかけてきたAA169局に車でピックアップしていただくことになる(下るのが速い!というより当局が遅いだけか?)。駐車場で固い握手をして別れる…。
AA169局には、山頂でスペシャルドリンクも頂戴したりと、お世話になり放しである。TNX! イワテAA169局。

各局TNX!       (’11/11)




運用データ

  
運用日時・運用場所:
 岩手県花巻市・遠野市・宮古市
 早池峰山山頂(1,917m)
  2011年11月3日(木) 
    9:00~13:25 
    
■主要装備:
  CB
   ・ICB-87R (ソニー)
  DCR351(デジタル簡易無線)
   ・IC-DPR5 (アイコム)
  特小
   ・DJ-R20D (アルインコ)


■電源

  ・Li-ion 7.4V/6.4Ah×1 (DCR)
        7.4V/1.8Ah×1 (DCRスペア)
        10.8V/1.6Ah×1 (87R)
        10.8V/1.6Ah×1 (87Rスペア)
  ・乾電池 (87R本体、R20D)及び単三スペア×4ほか

QSO局
CB、DCR、特小
(敬称略)

11/03:早池峰山 山頂
みやぎCF06/岩手県一関市束稲山 52/53 みやぎME06/岩手県一関市束稲山 52/52
いわてDE69/岩手県一関市室根山 57/59 いわてAN26/岩手県盛岡市 53/52
いわてME06/岩手県一関市経塚山 54/55 いわてCF06/岩手県一関市経塚山 53/54
いわてCF06/岩手県一関市経塚山(特小) M5/M5 いわてME06/岩手県一関市経塚山(特小) M5/M5
いわてAD03/岩手県遠野市寺沢高原(DCR) M5/M5 いわてAD03/岩手県遠野市寺沢高原 59/59+
いわてAD03/岩手県遠野市寺沢高原(特小) M5/M5 イワテAA707/岩手県盛岡市盛岡南IC 52/55
いわてDS94/岩手県遠野市物見山 59/59
アイボール:イワテAA169局


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