[宝石を散りばめたように輝く群青の海。小笠原、媒島(なこうどじま)がシルエットで浮かび上がる。]




JD1小笠原

この時期、これまで10年以上に渡って沖縄の離島から運用を行ってきたが、今年は少し趣向を変えて、小笠原諸島からの運用を計画してみる。アマチュア的に言うと日本には三つのエンティティがあるが、そのうちの「JD1小笠原」ということになる。小笠原諸島には父島、母島のほかに聟島(むこじま)、嫁島、媒島(=冒頭写真)、兄島、弟島、姉島、妹島などがあるが、人が住んでいるのは父島と母島のみだ。今回はできるだけ遠くからQRVしたいという思いで、父島よりさらに50Km南に浮かぶ母島からの運用である。

母島の人口は約470人、父島の4分の1以下で、集落は基本的に沖港という港に面した地区のみだ。山が南北に細長く海から突き出たような島なので、平地はほとんど全くなく、いわゆる海岸もほとんどない。猫の額ほどの砂浜がいくつかないわけではないが、ひょいと行けるような場所にはなく、時間をかけて歩かないと到達できないような基本的にアクセスが困難な場所にある。したがって、マリンスポーツもなかなか難しい場所である。ここに来るビジターは、砂浜やダイビング目的というよりはむしろバードウォッチングやホエールウォッチング、ハイキング、釣り目的の方が多いようだ。

着いてみて改めて分かったことだが、島のほんの一握りの場所以外は住む人もなく、島のほとんどは手つかずのままだ。かなりの秘境である。世界自然遺産となっているのもうなずける。こんな秘境でありながら、人口はむしろ増加傾向であるという。(小笠原村として、70年代初頭の千人未満から現在3千人弱に増加。) 残された豊かな大自然と、簡単にはやってこられない秘境感がむしろそうしたことに共鳴する人々を惹きつけるらしい。東京から正味26時間、これがここまでたどり着くのに必要な最小限の時間である。

今回は船に乗っている時間も長いのでMMも大いに活用しようという魂胆だ(笑。MMといっても小笠原まで1,000Km、交信した局長さんにとっては、いったいどこらへんでQSOしたのか、ひょっとしたら知りたいだろう、という余計な思い込みに基づき(笑、交信地点をGPSログに記録、緯度経度情報を交信局データ(最終ページ)に記させていただくことにする。

 左:竹芝桟橋で出航準備中のおがさわら丸(11,000トン、定員894名)



月は東に陽は西に

船は11時に竹芝桟橋を出航、浦賀水道を抜けるとぐんとスピードを増していく。甲板のテーブルで、潮風を受けながら、ビールとつまみを片手に至福の時が過ぎていく(笑。船は太平洋を快走する。まだ明るい内のビールは心なしか酔いが回るのが少し早いか???少しばかりの背徳感もすぐに木端微塵だ(笑。

ついでに昼寝もしながら、気がつくともう日没の時間が迫ってくる。西の甲板には、沈む夕日をカメラにおさめようと、乗船客が集まってくる。そうこうしているうちに東の空にはにょっきりと月も顔をだしてくる。月の出だ。

こちらもボヤボヤしていられない。後方甲板デッキに陣取り、さっそく87Rでウォッチ開始だ。この後方デッキは風を避けるためのべスポジのはずなのだが、アンテナの先の方はしなっているようだ。

ピュピュピューン音が適度に聞こえる。天然ノイズの上がり具合は悪くはない。しかし、CQに応答はない。19:30にソラチAA246局と交信できてからは、ノイズ加減の割には全く入感がない。先ほどから、そらちYS570局も時々強く聞こえてくるのだが、信号が途中で飛ぶような、断片的な電波の飛び方だ。聞こえてくるのはこの1局だけ、船はすでに八丈島沖を通過中だ。何度か行ったり来たりしていたようだが、20:30ようやくYS570局とのQSOに成功する。これから小笠原に向かう当局にとっては、YS570局の力強い「がんばってください」という言葉が印象に刻まれる。

今年は例年に比べて、北からのEsでの入感がいつもの時期より早いようで、掲示板等を拝見していても、8や7エリアとのQSOが6月から多いようだ。今年は、この時期にしては梅雨前線の位置が高止まりしており、北からの入感が多いのは梅雨前線の位置が北に上がっているせいではないかと、勝手に推測している。例年なら8や7が調子よくなるのは7月初旬以降で、今年はあたかも梅雨明けしてしまったような格好になっているのである。

船は星空の海を快走しつづけるが、YS570局以降は入感はない。ともあれ明日も朝からのMM運用に期待しよう(笑。

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 陽は沈み(左)、そして月が上がってきた。(中、右)  



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