2016運用記
岩茸石山
東京都青梅市・奥多摩町






コートが脱げる頃

そろそろ通勤でもコートが脱げ始めた頃だ。もっとも、東京地区の話ではあるが。三寒四温とはよく言ったもので、ここ一週間は4月~5月並みの最高気温を記録する日も増えてきた。本格的な春はもうすぐそこだ。ただ、岩茸石山の空はまだ微妙で、空の明るさは春の訪れを予感させるものの、その空に映える山頂の木々の枝枝の寂しさは、まだ冬空の顔をもたせるのである。

朝一の山頂の空は深く青い。家で寝ているときに明け方までビュービューと唸っていた強風も、今の時間となってはほとんど無風だ。・・・少なくともここ岩茸石山では。絶好のオンエアデー日和である。

春の一斉オンエアデー(春オン)は、岩茸石山だ。標高は793mほど、奥多摩登山(ハイキング)の入門コースとして有名な、高水三山のひとつだ。高水三山とは惣岳山、高水山、岩茸石山の三つで、これらを結ぶハイキングコースは奥多摩の代表的なコースとして有名だが、意外とCB運用はあまり行われていない。高水山では当局も何度も運用しているが、岩茸石山では、最近ではいたばしAB303局さんが、いたばしRCをやられたり、サイタマKM117局さんが、黒山方面への道すがら短時間QRVされている程度ではないだろうか。

岩茸石山へ行くにはいろいろなコースがあるが、いつも手抜きの当局は高水山側から登ろうという魂胆だ。高水山山頂直下には常福院というお寺があり、そこまでは車で登れるし、高水山(駐車スペース)から岩茸石山までは40分程度の距離で、アップダウンがあるもののほとんど標高差はなくラクチンだ。

朝、ハイカーが一人やってくる。この時間まだ山頂は静かだ。
明るい空と、冬枯れた枝枝のコントラストが冬から春への移り変わりを暗示する。


ルート変更

ところが、朝、常福院へ登る林道入り口へ着いてみると、最近の降雪で崩落したとのことで通行止めである(笑。今日は岩茸石山は諦めようか、参道を使って常福院まで登ろうか・・・いろいろ考えが巡るが、うろ覚えの、大丹波側登山口へ回ってみることにする。今日は楽勝登山しか頭になかったので登山用の地図は持ってきていない。たまたま昨晩、地図で漠然と大丹波からのコースを眺めていただけの話だ。特に登り口の場所については、うろ覚えというより、ほぼ当てずっぽうに近い(笑。

確か大丹波からのハイキングコースも、コースタイム50分程度(国際虹ます釣り場駐車場より)とかなり短かったはずだが、駐車場に着いてみると、うそかほんとか、高度計は290mだ。ということは、こちらは50分で標高差を500m稼ぐ必要がある(=1時間換算600m)。高水山からとは大違いだ。この数字は当局的には少々きついが、惣岳山経由まともに登っていたのでは2時間半くらいかかるはずなので、岩茸石山に行くならこの最短コースしか選択肢はない。ただし、大丹波側は高水山側からとは正反対の西側からのアプローチになる。高水山から、車を15キロ弱さらに回送する必要があり、これだけで既に30分以上ロスしていることになる。

天高く・・・、というのは秋の枕詞だが、春先のこの時期にもふさわしいくらい、山頂の空は底抜けの感じだ。風は微風、わずかにひんやりと冷たいが、雲のかけらで時々隠される太陽が、顔を出しさえすれば、かなり暖かな運用が期待できそうだ。


 名坂峠
 大丹波⇔岩茸石山は僅かに2Km。
 左上方向が黒山方面。

東京都北部~埼玉南部方向
視界はばっちり開ける。




SS44局@雲取山頂

本日の装備は、707と100mWの610T、そしていざという時の87Rである。「いざという時」というのは飛び受け限界時の信号に出くわした時に出動ということだ。本当は試験のために100mWメインで運用したいところだが、この610Tは7/8Ch仕様なのでそう簡単にはいかない。案の定ここも7Chは意味不明のノイズで使い物になりそうもないし、かと言って8ChでCQを出すというのも気が引ける。いくら100mWといえども今日はイベントデーで、そこかしこに移動局がおられるはずだ。ここはCQへの応答狙いが基本だ。適当な局が飛んでくるのを待つとして、とりあえずは4Chで運用だ(笑。

春の一斉OADと言えば、運用局も多くなく少々しけたイメージがあるのだが、今日は例年になく、あちこちに移動局が出ているようだ。天気が良いせいかもしれない。

雲取山山頂ではとうきょうSS44局が運用されており、コールをいただく。あちらはこちらと違って、やはり本格的な「山」のようだ。風もかなり冷たいようで、気温もマイナス3℃ほどらしい。また雪が舞い降りてきそうな雲行きだという。別にQSOで背景の音や映像を聞いたり見たりできるわけではないが、ひっそりと静まり返ったシンとした山の情景を想起させてくれる。標高差は1,200m程、まだあちらは冬の山ということなのだろう。

イベントデーというだけあって、サイタマIC251局(上尾市)他、「自宅の庭先からです」と言われる局長さんも結構おられる。岩茸石山は、特に東側は何ら視界を遮るものはなく、ばっちり開けているので、埼玉方向にはよく飛ぶようで、サイタマTA390局、ヒョウゴAB337局など平地の移動局とも良くつながる。

バンド内はいつになく各チャンネル大賑わいだ。高い場所にいると、合法局同士が3局ぐらい混信してくる。ということは、こちらはどの局とも交信できないということになる(笑。普段は使わない1ChでホロホロとCQを出していると、複数の局長さんから呼ばれる。「QRZ?」とか、呑気なことを言っていたらローカルさんではなく、沖縄のYC228局さんからのコールだった(笑。(TNX! YC228局)Esのことは全く頭に入っていなかった。いつの間にかコンディションが上がっていたようである。


100mWの飛びはどうなのか?



8Chもそろそろ頃合いはよさそうだ。610Tの出番である。ちょうどヨコハマAA815局が運用されている。AA815局は今日も六国見山(鎌倉)から出られているようだ。

610Tからは耳S53程度で、FBに聞こえてくる(610TにSメータはない)。これなら100mWでも大丈夫だろう。楽勝気分でコールにかかるが、しかし全く反応はない(爆。かすりもしないようだ。う~~む、2014年10月の子の権現(埼玉県飯能市)の記憶が蘇る。あの時100mW機を3台用意、六国見山で運用中のAA815局を相手に実験させて頂くものの、こちらからは全く飛ばなかった。今日はそれと全く同じパターンではないか。しかし子の権現よりこちらの方が150mくらい(笑)高いのだけど・・・。

仕方なく87Rでコールしてみると、いただいたレポートは51だ。これでは100mWでは聞こえるはずがない。

その後も海ほたる(千葉県木更津市)で運用中のカナガワAA253局や、千葉市で運用中のサイタマAD966局などのCQにチャレンジするも、全く応答がない(笑。AD966局とはすでに500mWでQSOを終えていたが、500と100でこんなに差があるのか???(笑。AD966局は今回はめずらしく7ChでのCQだ。7Chには例の固有のノイズがあるのだが、受信の方はノイズには関係なしに全く問題なく聞こえてくるのだが・・・。610Tの受信はすばらしい、しかし100mWの飛びの実力や如何?????別の機会にもう少し実験を続けてみる必要がありそうだ。

一方、高尾山からは、かながわYS41局が聞こえてくる。50mWで運用されているようで、次から次へと交信されている。当局も50mWの52A(東芝)を持っているが、なかなかこうはいかないだろう。つまり当局の52Aではこんなに次から次へと交信はできそうにない。RSは51/M5(87R使用)。リグは何を使われているのか聞きそこねたが、おそらくオリジナルの性能を保っているものと思われる。50mWの信号はおもしろいもので、まるでミニチュアのような聞こえ方である。信号強度はもちろん小さいのだが、変調は500mW機のようにしっかりと聞こえてくるのである。

結果的に610TでのQSOはゼロ。今日の610T は完全に50mWにも負けてしまったかもしれない(笑。


切り株運用
左写真: 向こう側に見えるのは高水山。



RJ-56も登場

50mWも然りだが、いろいろなリグが出てくるところが、イベントデーの面白いところでもある。2ChでCQを出していると、ガツンと入感がある。吉見町のサイタマAD421局だ。ナショナルのRJ-56からのコールだ。Sメータはかなり振れがいいようで、当局の信号はS9を振っているらしい(笑。RJ-56と言えば、ヴィンテージトランシーバー、まともに動いていることだけで奇跡に近いが、どっこいこちらに飛んでくる信号も変調は極めてまとも、全く正常である。こちらにはS4だ。当局はたまたま他のチャンネルが埋まっていたので、2Chを使用していただけだが、1/2Chしかない時代の500mWポータブル機にとっては、絶好のチャンスだったかもしれない。巷では、ナショナルのリグはSONYのリグに比べて持ちがいい(=オリジナルの性能を維持している)とよく言われるが、今回もそれを証明したような形だ。

AD421局とはサイタマAB960局が合同運用されていたようで、続けてQSOいただく。AB960局とは、秩父高原牧場から年末のご挨拶をして以来、早3か月半。ということは、当たり前だが、あれからもう1/4年以上の時が経過したことになる。この間、我々は、いや少なくとも当局はどれだけ成長したのだろうか(笑?最近あまりに時の経つのが速く感じられるのは、歳をとった証拠かもしれないが、それだけにその中身が余計気になるのである。というより、時が経つのがもったいない、という焦りにも似た気持ちが実のところかも知れない。

いつものように最後のコーヒーを淹れ終えると、そろそろ撤収する時間が迫ってくる。5杯目のキリマンジャロが一瞬辺りに漂う。コーヒーを飲みながら、とうきょうSS44局の交信を聞いていると、とうとう雪が舞い降り始めたようである。それでもまだ雲取山頂でがんばっておられる。岩茸石山でも知らぬ間に急速に雲が広まってきた。日差しが遮られ始めると、春の陽気の明るい青空からにわかに一転、冬の寂しい山頂に戻ったかのようだ。一時はシートに腰を下ろした人たちであふれていた山頂も、当局も入れて、今はもう3、4人ほどを残すだけだ。

どこまでもグランドウェーブで延びることがないというのは、高山移動局がほとんどいないせいである。一方で今日はYLステーションも2、3局聞こえていた。これらが春オンらしい、ということかもしれない。


各局TNX!!
                                               ('16/3)




運用データ

■運用日時・運用場所:
 
 ・2016年3月20日(日) 8:45~14:05 
  ・東京都青梅市/奥多摩町 岩茸石山 山頂(標高793m)
  

■使用&装備リグ:
  CB : ICB-707(SONY)、ICB-610T(SONY)、ICB-87R(SONY)
  DCR: IC-DPR5(ICOM)+1/4λホイップ
  
■使用電源
  リチウムイオン電池10.8V/2.6Ahほか


QSO局
37QSO TNX!!  
(敬称略)

3月20日(日) 8:45~14:05  
カワサキAB117/横浜市都筑区 51/52 トチギAK827/栃木県佐野市みかも山 57/57
いばらきAO35/茨城県筑波山(中腹) 55/57 サイタマTA390/埼玉県狭山市 59/58
とうきょうSS44/東京都奥多摩町雲取山山頂 56/57 サイタマIC521/埼玉県上尾市 53/53
ヒョウゴAB337/埼玉県入間市入間川 56/56 カナガワAA253/千葉県木更津市海ほたる 53/51
かわさきHA71/横浜市都筑区  52/52  サイタマMS118/埼玉県小川町  51/53 
サイタマAD966/千葉県美浜区新港 54/55  オキナワYC228/沖縄県石垣島 51/51 
ヨコハマAA815/神奈川県鎌倉市六国見山  53/51 イバラギAB110/茨城県常陸大宮市尺丈山(DCR)  M5/M5 
トチギTN225/栃木県大田原市御亭山(DCR)  M5/M5  キタタマクモスケ31/東京都小平市(DCR)  M5/M5
ヨコハマYH175/川崎市幸区(DCR)  M5/M5 カナガワSS702/神奈川県川崎市飯室山(DCR) M5/M5 
ショウナンエボシ1/神奈川県茅ケ崎市(DCR)   M5/M5  チバYN515/千葉県成田市(DCR)  M5/M5 
アオモリTO051/東京都西多摩郡日の出町  59/59  チバCB750/千葉県南房総市  51/51 
カナガワAD159/神奈川県伊勢原市大山  53/53  いばらきSO47/茨城県筑波山  54/56 
サイタマHK118/埼玉県宮代町  54/54  いばらきVX7/茨城県石岡市朝日峠  56/55 
おおたY16/東京都足立区舎人公園  51/52  ところざわMB39/埼玉県狭山市入間川  57/55 
チバYN515/千葉県成田市  51/53  トチギAC427/栃木県鹿沼市  52/51 
かながわYS41(50mW)/東京都八王子市高尾山  51/M5  カナガワCA420/神奈川県清川村経ヶ岳  53/53 
グンマAB123/栃木県益子町高舘山  52/53  サイタマAD421/埼玉県吉見町  54/59 
サイタマAB960/埼玉県吉見町  56/55  あいちOT25/埼玉県飯能市旭山展望台  59+/59+ 
かながわCE47/神奈川県相模原市城山湖  51/52     



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