9 10



[東り浜。どこまでも透明な海と空がつづく。]



静かな光景

渡名喜島での一発目の運用ロケは、島の東側にある東り浜(あがりはま)である。あがりとは陽が上がる東を意味する。映画「群青」の冒頭では、群青色の朝の風景、海人である、主人公「凉子」(長澤まさみ)の父親「龍二」が深い群青の海の底から海面に上がってくるシーンなどが展開されるが、この朝の風景や、要所要所で現れるのがこの東り浜からずっと向こうに伸びていくヲム岬(うむみさき)の光景だ。

東り浜は、少し茶色がかってはいるが白砂系の美しい海岸だ。ここには浜辺へと降りる通路脇にいくつかのテーブルとイスがセッティングされている。運用にはおあつらえ向きの場所である。時間は11:20を回っており、そろそろお昼休み運用を開始する局がでてくる時刻だ。さっそく580Dをテーブルに置いてスイッチを入れてみる。静かな浜辺にピュルピュル音が小さく響き始める。

椅子に座った目に浜辺の光景が輝く。サングラスを通しても明るく透過してくる光は、より一層白砂の浜辺、海と空、そして雲の色を引き立てている。静かな景色だ。

11:30、580DからはQSBに乗った弱いCQがもれ始めてくる。イバラキAB399局だ。ほどなくミエAA469局のCQも聞こえ出す。しかし、落ちている時間が長く、もう少し上がるのを待つ必要がありそうだ。コンディションは明らかに上がってくる気配だ。


英語の「え」、飛行機の「ひ」・・・

QSO可能なレベルに上がってきたのは45分過ぎからである。しずおかDD23局、先ほどから聞こえていたイバラキAB399局との交信から始まる。

12時になってからは積極的にCQの連発体制だ。タイミングよくコンディションも更に上がってきた。四日市港の沖縄ポイントからはミエAC129局が、耳S57で超強力入感してくる。沖縄ポイントは本当に不思議な場所で、同じ四日市港と比べても、いつも格段に強く飛んでくる。

12:30頃になるとピュルルンもS3から7を行ったりきたりの振りっぱなしだ。コンディションが上がるのはうれしいことだが、ここまであがると逆に弱い信号が取りづらくなる。えひめCA34局のCQもQSBを伴って入感し始めるが41程度でまだ弱めで、なかなか上がってこない。ノイズに埋もれがちだ。いつもなら、英語の「え」、飛行機の「ひ」、明治の「め」・・・チャーリーアルファーサーティーフォー!!と、歯切れよく一緒にCQを唱和するところだが(笑、昨年の多良間漁港同様、今日もそんな余裕はない。ようやくQSOできたのは1時近くになってからである。

さすがに各局お昼休み運用とあって、1時を過ぎるとパタリと入感がなくなる。相変わらずノイズ加減も好調だが、CQを出しても反応はない。次なるロケ地、大本田展望台(ウーンダてんぼうだい)へ移動し、腰を落ち着けてQRVすることにする。

左:静かな浜辺にピュルピュル音が小さく響き始める。
中:「群青」でもテーマ的映像となっている、ヲム岬。 
 



次ページ  前ページ    

(QSO局は最終ページにまとめて掲載しています。)


© Nagoya YK221

 2014沖